出版社/著者からの内容紹介
これまでの多くの軍事史家は、日本軍が非合理であったために失敗したとしていますが、本書では日本軍が合理的に失敗したことを理論的に説明しています。とくに、本書ではその典型的な事例として「ガダルカナル戦での日本軍の失敗」と「インパール作戦での日本軍の失敗」を分析しております。
この日本軍と同じ不条理な現象が、実は現代の日本企業にも起こっているように思います。今日多発している企業の不正も、無知や不道徳さから起こっているのではなく、むしろ不正であることを十分知りつつ、合理的に行っているのであり、非効率であることを知りつつ、合理的に行っているのではないかと思います。
このような会社組織の不条理に悩まされている社会人の方々に、ぜひ一度読んでもらいたいと思います。そして、このような組織の不条理からいかにして脱出するかを知りたい人は、本書の続編である次の本を読んでいただきたいと思います。
菊澤研宗著『命令違反が組織を伸ばす』光文社新書 2007年
内容(「BOOK」データベースより)
内容(「MARC」データベースより)
著者について
究科博士課程修了。1988年防衛大学校社会科学教室専任講師。1993年ニューヨー
ク大学スターン経営大学院客員研究員。1999年防衛大学校社会科学教室・総合安
全保障研究科教授。2002年中央大学大学院国際会計研究科教授。慶應義塾
大学商学部・商学研究科教授。博士(商学)、慶應義塾大学1998年。著書に、『比
較コーポレート・ガバナンス論』(第1回経営学史学会賞受賞、有斐閣、2004年)
など
抜粋
本書のねらい
大東亜戦争における日本陸軍の行動は不条理に満ちている。本書は、この不条
理な日本軍の戦闘行動に注目し、なぜ日本軍が不条理な行動に陥ったのかを問う
ものである。
たとえば、ガダルカナル戦では、近代兵器を装備した米軍に対して、日本軍は
銃剣をもって肉弾突撃する白兵突撃作戦を一度ではなく三度にわたって繰り広げ
た。そして、当然、日本軍は全滅した。なぜ日本軍はこのような不条理な白兵突
撃作戦を三回にわたって繰り広げたのか。また、インパール作戦では、前線で戦
う兵士に武器や食料を継続的に補給できないために大量の兵士が無駄死すること
がわかっていた。しかし、この作戦は実行され、必然的に多くの日本兵が餓え
と病気で死んた。なぜこのような作戦を日本軍は実行してしまったのか。
このような問いに対して、これまで多くの正統派研究者は、日本軍に内在する
非合理性を指摘してきた。人間の非合理性がこのような不条理な組織行動に導い
たのだということである。しかも、このような不条理な日本軍の行動は、戦場と
いう異常な状況で発生する例外的な行動であり、日常的にはほとんど起こりえな
い異常な現象とみなされてきた。
しかし、このような不条理な行動に導く原因は、実は人間の非合理性にあるの
ではなく、人間の合理性にあるというのが本書を貫く基本的な考えである。しか
も、このような不条理な行動は決して非日常的な現象ではなく、条件さえ整えば
どんな人間組織も陥る普遍的な現象であり、現在でもそしてまた将来においても
発生しうる恐ろしい組織現象なのである。
たとえば、今日、高速増殖炉「もんじゅ」のナトリウム漏洩事故をめぐる組織
的隠蔽工作、大和銀行の不正取引をめぐる組織的隠蔽、そして神奈川県警内部の
不祥事をめぐる組織的隠蔽などが注目されている。これらはいずれも人間の非合
理性が生み出した事件ではない。それらはいずれも隠蔽することが不正であるこ
とを知りつつ、意図的に事実を隠蔽しようする「合理的な不正」なのである。
本書は、このような現代に蔓延する組織の不条理を解明するために、戦争の
世紀と呼ばれる二〇世紀末に、改めて大東亜戦争で繰り広げられた日本軍の不条
理な組織行動を問い直し、その不条理の背後に人間の合理性があることを明らか
にする。しかも、このような不条理な現象は決して戦争に固有の過去の現象では
なく、現代組織にも起ることを明らかにする。さらに、将来、このような不条理
な組織行動に陥らないように、不完全なわれわれ人間が何をなしうるのかを明ら
かにする。これらが本書のねらいである。