栗本薫さんの描く伊集院大介シリーズの第一作目。
第二回吉川英治文学新人賞受賞した作品。本格推理小説の名に恥じない、これ単体で完成している傑作。ジュネ系の先駆である彼女の世界観や、家元の日本的『イエ』のドロドロとした文芸的な側面など、推理小説の枠にはまらない複雑な構成は、後の彼女資質を非常に凝縮した形で表している。超多作である彼女の作品群は、これまでのシリーズを読んでいないと分からない作品のほうが多いので、初めて栗本ワールドに触れるなら、お薦めの作品です。デヴュー作にはその作者の全てがあると(デヴュー作ではないですが)いいますが、まさに彼女のオリジナルな部分がワンセットで表現されています。
江戸川乱歩や夢野久作、最近ではちょっと違うが京極夏彦や坂東真砂子等の日本の土俗的因習的で複雑に入り組んだ血縁関係を背景とする世界観や、映像で云うと『犬神家の一族』『悪魔の手毬歌』等の市川昆監督の金田一耕介シリーズなどが好きな人には、特にお薦めです。
個人的には、過去幾多の作品が『人間が人間を殺す』という殺人の動機というものを描いてきましたが、家の因習から生まれる日本的気質と業をストレートに表現している作品は他には知りません。その業の恐ろしさと腐敗臭と共に、その悲しみを背負った気高さ怜悧なまでの美しさは、読後に強い余韻を残します。社会学や文化人類学の本を読むときも、日本的因習や伝統の本質は、実ここにあると感じてしまうほどです。僕は、大傑作だと思っています。