第24回吉川英治文学賞受賞2004年度 このミス2位、文春2003ミステリーベスト10で5位。
1945年8月、終戦を間近に控えた日本では、未だにあるべき終戦の形が見えないでいた。そのさなか、「我々は見つけなくてはならない。空前の飢餓に耐え、なお人にあり続けられる尊厳の在り所を。日本民族を百年先まで生きながらえさせる方法を」と語り、在るべき日本人の姿を取り戻すため、「国家の切腹」を断行しようとする浅倉。そして、終戦後のソ連との関係をにらみ、在るべき終戦の形を模索し、かつ「ローレライ」を手中に収めようとするアメリカ。様々な思いが交錯し、戦争の勝敗とは無関係に、広島・長崎よりも多くの日本人の命が、無駄に失われようとしていた。傷だらけの伊507はこれを阻止することができるのだろうか?
先に書いた「亡国のイージス」だが、私にとっては文章を読みづらく感じ、世間の評判ほど面白いとは思わなかった。しかしながら、私と同様の感想を持った方も、心配することなく是非購入して頂きたい。序章は、前作同様若干読みがたいが、ここをすぎるとあとは本を置くことが困難になる。
この本を読んでいると、頭の中を「椰子の実」のフレーズが流れ続ける。私事ではあるが、後半部分を列車内で読むハメとなり、涙をこらえるのに相当苦労した。特に後半は、周りに人がいない静かなところで本作品を読むことをおすすめしたい。
本作品が単なる「冒険小説」であるから。第5章までで終わりでよい。しかし、あえて「終章」として文章を追加したところに、作者の、現代社会を生きる我々に対する強いメッセージが感じられる。この「終章」により作品に奥行きが出るとともに、より鮮烈な読後感を得ることができると思う。
このようなすばらしい作品に出会えるから、読書はやめられない。久しぶりに読書の喜びを実感できた作品であった。