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戦前の大阪の上流家庭の暮らしぶり、考え方、生活の雰囲気が余すところなく伝わってくる名作です。上流家庭に限ってではありますが、戦前の日本の、精神的にも物質的にも比較的豊かな姿と、徐々にきな臭くなっていく世界の状況が絶妙に描写されています。3冊で約900ページとボリュームがありますが、長さを感じさせません。
ストーリーと登場人物の描写がともに素晴らしく、特に厳格な本家の鶴子と甘いところもある分家の幸子の対比、中に籠もりがちな雪子とどんどん外に出て行く妙子の対比が鮮やかです。日本の近代化に合わせて発生した、新しいものへのベクトルと、古いものへの郷愁とのぶつかり合いが表現されているのでしょう。どちらが良いとも判断せず、ただ淡々とストーリーを描き、評価は読者に委ねる谷崎のやり方に好感を持ちました。
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