市川崑監督の細雪と比較しながら見てみました。こちらは、製作が1950年ということですので、映像の明るさは比較になりません。したがって桜や着物の美しさなどは、なかなかわかりません。これは、市川昆監督のほうが違うルールでゲームをやったようなものです。またフィルムの磨耗でしょうか、かなりの部分で聞き取りにくい部分が見受けられます。しかし暗い映像のトーンが「過ぎ去った時代」を浮かび上がらせて、決して飽きさせることはありません。第二に配役ですが、雪子役の女優(花井蘭子さん?)は原作どおりのイメージの女優です。驚くべきことに谷崎の奥さんにもそっくりなようです。このような女性は今はもう存在しないんですかね。二女の幸子役は、轟夕起子さん(?)と佐久間良子さんどちらも甲乙つけがたいですね。四女の妙子は、高峰秀子さんに軍配が上がります。第三にスクリプトは、市川昆作品の方は、一年間の出来事に編集しなおされ、最後はちょっと許しがたいストーリーの改変が行われています。こちらの方も、エンディングは原作と異なりますが、もともと原作のエンディング自体がなかなか映像になじまない終わり方ですので、これは許される範囲内でしょう。ただこの作品も最後のお見合いの部分はだいぶとばされています。もともとが雪子のお見合いの繰り返しと妙子の起こす恋愛事件だけによって、時間の感覚を与えられている作品ともいえますが、両作品共に映画という時間の拘束により、どうしても、お見合いという「平凡」な場面をうまく映画の中に位置づけていくのは困難なのでしょう。さてどちらが1930年代の関西をうまく表現したといえるのでしょうか。それとも、もともとそんな関西は谷崎の頭にしかなかったのか?これは難問です。