本書は、「獄窓記」の著者が服役経験を交え障害者の犯罪をリポートした、画期的なノンフィクションである。
刑法には、心神喪失者の行為は罰せず心神耗弱者の罪は軽減する旨が定められている。この条文を根拠に、私は知的障害者は犯罪を犯しても通常服役することはないものだと思い、またそうしたあり方に少なからぬ疑問を抱いていた。
だが、現実は異なっていた。
14歳未満は刑事未成年として不処罰となるにもかかわらず、知能の面でそれ以下である多くの知的障害者が、実際には刑を受け服役しているというのだ。論理的に反論する能力を持たないため、警察のシナリオどおりの調書が取られ、犯罪者に仕立て上げられた障害者もいたという。
責任能力の有無にかかわらず、殺人等の重大犯罪を犯した者については情状酌量の余地はあるにせよ、なんらかの刑に服するべきだと私は考えていた。だが、軽度の知的障害であるがゆえに福祉の枠からは外れ、かといって「健常者」が支配する社会には居場所がなく、刑務所が唯一の居場所とならざるをえない累犯障害者の現実を目の当たりにすると、複雑な思いにかられてしまう。
他にもろうあ者の暴力団の存在や売春する知的障害者の女性たちなど、今まで知りえなかった驚くべき現実を精巧な筆致で書き綴っている。