研究者たちの人間模様をとおして描いた、素粒子物理学発展史。
さまざまな失敗談や歴史に埋もれた研究者へのインタビューなど、ふつうの科学解説書では読めない逸話にあふれ、一気に読めてしまうおもしろさです。
初版が1986年('96年改訂)ということもあり、内容は多少古いものの、ファインマン,シュウィンガー,ベーテなどをはじめとする、すでに故人となった大物たちへの直接取材が行なわれており、歴史的にも価値の高い内容といえます。
巻末には、50頁をこえる注記や引用文献も。
上巻では、X線の発見から量子力学の建設、量子電磁力学の成功、湯川中間子論にはじまる原子核内部の研究、つまりは素粒子論の黎明期へと話はすすみます。
上下巻あわせ本文のみで900ページを越える内容ということもあり、研究発展の流れだけではなく、現場におけるさまざまな話が興味深く描写されています。
20世紀初頭、致死量に近い放射性物質を、ゴム手袋だけで持ち運びしていたという、実験家たちの身の毛のよだつような話。
現在の大学では、ラザフォードの原子核発見の実験を再現しようとすれば、放射線源の入手から運搬、それに健康管理の問題までふくめ、関係当局の許可を取りつけるだけでも大変な手間がかかるようです。
また、宇宙線観測がさかんに行なわれていたころには、冬の高山で遭難する物理学者も少なくなかったのだとか。
しかし、そういった宇宙線観測をつうじ、数多くの新粒子が発見され、やがて時代は素粒子物理学の領域に突入していきます。