この映画のリメイク版が面白いと友人に勧められたが、原作である「素晴らしき哉、人生!」を調べてみると、アメリカでは毎年クリスマスに放映される 定番映画であるということや、映画を学ぶ学生には必ず見せるべき作品とされていたことから、むしろこのオリジナルの方を観てみたくなって入手した。
モノクロ映画でなんと130分の大作だったが、まったく最後まで飽きさせない見事な編集である。古いハリウッド映画が好きでいくつかお気に入りはあったが、今まで好んで観ていた作品は主に50〜60年代以降のカラー作品で、こんな古い映画は例外である。
人物造形を全く逆にした「クリスマス・キャロル」と言えば分かり良いだろうか。映画で言うと「3人のゴースト」が有名だと思うが、実はこの話はちゃんと 読んでもいないし観てもいない。「クリスマス・キャロル」は、クリスマスイヴの夜に冷血な拝金主義者が、3人の精霊が見せる過去・現在・未来の情景によって心を入れ替える話。
この映画「素晴らしき哉、人生!」でもクライマックスの舞台はクリスマスの夜だが、まずはそこに至るまでの主人公の半生が丁寧に描かれてゆく。そしてこの主人公をずっと苦しめつづけるのが、まるで「クリスマス・キャロル」の主役のような人物である。
善人であり夢と希望に満ちあふれた好人物の主人公は、夢だった世界旅行と大舞台での仕事を捨て、亡くなった父の跡を継いで生まれ育った町の人々に尽くす住宅融資会社の経営を決意する。主人公の手腕によって町の 人々は救われ会社も順風満帆だった。そんなある日、共同経営者であった伯父が会社の大金を無くし、絶望した主人公は自殺を計る。
この映画には3人の精霊ではなく、未だに神様から翼を貰えない2級天使の冴えないオッサンが登場し、もし主人公がこの世に存在しなかった場合の町の悲惨な姿を見せつける。
特撮もない65年も前のモノクロ映画でもちゃんとファンタジーが描けている。そして評判通り感動的な大いに泣ける映画である。なんとなく現在進行形の ウォール街の抗議活動のニュースがだぶった。懐が豊かになると心が貧しくなるという真理は忘れずに生きて行きたいものである。
主演のジェームズ・スチュアートは古い映画俳優として好きだったが、どうも私生活でも見た目通りの誠実な人物だったらしく、スキャンダルもなく最初の結婚と家庭生活を生涯大事にしたそうである。そんな話を読んだら他の映画も観たくなってしまった。
ちなみに友人に勧められたリメイク作品はニコラス・ケイジ主演の「天使のくれた時間」。あらすじを調べると大分違う内容で、解説によるとリメイクではなくモチーフにしたとのこと。