フランク・キャプラとその映画は素晴らしい。イタリア移民としてアメリカン・ドリームを体現し、今なおアメリカ人が自らの姿をチェックする鑑のような名作映画を数多く撮り、それ故に全世界的な影響を及ぼし続けている名匠だ。史上最多ではないが、アカデミー監督賞を3度受賞している。私は中学か高校の頃「スミス都へ行く」や「或る世の出来事」をTVで観て以来のファンだが、本書は日本初の評伝だとのこと。これまで評伝がなかったことが驚きだが、決して遅すぎることはない。1人でも多くの人にキャプラ監督その人と映画を知ってもらいたいと思う。
本書はその善きガイド本になるだろうけれども、粗筋がわかってしまうのは痛し痒し。キャプラ作品を未見の人は上記2本と「素晴しき哉、人生!」を観てから本書を読んで、彼のいい時ばかりではなかった人生を知り、他の観るべき作品の見当をつけるのがいいだろう。
例えば「我が家の楽園」。K. Vonnegutの小説God bless you, Mr. Rosewaterに影響を与えているのは明らかだ。そういう発見がある。
本書はかなりの部分を監督の自伝”The Name Above the Title: An Autobiography”に負っている。もちろん自伝に100%依拠せず、相当な量の文献を参考にして真実に迫ろうとしている。その労力を少とするものではないが、諸文献をつまみ読みしたような読後感をぬぐえないのは惜しい。
細かい点だが、日本映画への影響を語る文章で、木下恵介監督にだけ巨匠の冠を被せているのは何故?