通常ロマンス小説に限らず、主人公は冴えない平凡なタイプだったり、天真爛漫なKY気味な鈍感タイプだったり、頭がいいばかりに周囲から孤立していてコミュニケーション能力に欠けているタイプだったり、とどこかしらに欠陥があり、それを補うかのように友人やら恋人やらが登場して、というパターンだと思う。しかし、この作品の主人公、ソフィーは正にGrand Sophyなのだ。頭もいい、度胸もある、洞察力も鋭く、正義感が強く、ユーモアにも長けていて、人情家で、ボランティア精神に富み・・・とくれば、他に何を望もうか?という完璧さである。この時代の英国上流社会に必要とされる財力も持ち合わせ、父親は世界を飛び回る外交官。こんな令嬢なら現代社会であれば、もててもてて仕方が無いのではないかと思うが、19世紀ともなれば、良縁に恵まれる為の女性の条件は、従順で政治や社会の事情にも口出しをしない、階級社会の規律を守る、立派な母親となるべく育てられた深層の令嬢であることなのだ。ソフィーは長い外国生活と、破天荒で大らかな父親に育てられたせいで、英国上流社会の常識から大いに逸脱した人間として、従兄弟の家で小型台風を巻き起こす。従兄弟の家族はそれぞれに問題を抱えていて、家の中は暗くなる一方なのだが、ソフィーの持前の明るさとユーモアであっという間に家族の仲間入りをし、魔法のように問題を一気に解決してしまう。かなりの荒業だったり、時には予期せぬ邪魔者が入ったりして、物語は加速度を増し、収拾のつかない事態になりかけるが、絶妙なタイミングで大団円を迎えるのが、爽快極まれり!と拍手喝采を送りたくなる程に楽しい。スピード感のあるヒストリカルラブコメ、その魅力の殆どはこの完璧な主人公にあるのは間違いない。