紙が発明された中国や、和紙が出来た日本なども十分言及されていますが、基本的にはヨーロッパにおける紙を辿った本。
まず第1章「アジアの紙」では、中国で紙が発明されてから、1000年以上(!)かかって西欧に到達する様子を紹介。
初期の紙の製法も詳しく書かれており、また、文字を書いたり印刷したりするだけではなく、
トイレットペーパーや障子、おみくじに至るまでいろいろと紙を活用したアジアの姿が浮き彫りになる。
第2章「紙の道」では、シルクロードならぬ紙の道を通じて、中国から中東へ、そして西欧へと、
ゆっくりゆっくり紙が伝播していった様子を紹介。まずイスラム世界に紙が定着したのである。
第3章は西欧の製紙所について。ボロの亜麻布を原料にしたフランス、イタリアなどの製紙所での詳しい工程、
原料調達の苦労(古い布を回収するので)、思想などの伝達に果たした役割、印刷術の発明との密接な関係が述べられる。
第4章では、工業・化学の発達に伴う機械化の様子と、ボロ布にかわる原料としての木材パルプの登場、化学処理の登場などを紹介。
第5章では現代の紙の様子を外観し、木材パルプの消費・工場の排水などに伴う環境/資源問題も論じる。ここで筆者は、
製紙産業が意外と森林を破壊していないこと、工場の排煙は大部分水蒸気であること、有害物質を取り除いていることを述べ、
製紙産業を擁護する立場をとっている。また、これから時代の紙の可能性を示唆している。
巻末には、紙にまつわることが書かれた文学や書簡などを抜粋して掲載。
巻末以外、カラー写真が非常に豊富で、紙が長い歴史の中で世界で果たしてきた役割をわかりやすく概観することができる。