感性論から誤謬推論までは脳科学の世界と対比しながら読んできたが、この二律背反は主として理論物理学の万物理論の世界との対比となる。
この章は、世界の時間空間的な限界があるか、世界を分割してゆくと単純なものに行き着くか、自由はあるか、世界を超越した必然的な存在があるかという4つのテーマについて、テーゼとアンチテーゼを展開するところから始まる。4つのテーマについての議論の展開が終わると、それらは「戯れ」として括られ、以降具体的な検討に展開される。以前読んだ訳ではこのような小気味良い構成であることは感じられなかった。
昔この著作を読んだ時は図式論原則論のあたりまではワクワクしながら読み進んだが、誤謬推論以降は議論の主旨が把握できず惰性で読んだ。今回中島義道氏のカントに関する著作を導きとしてこの翻訳に取り組み、あらためてカントのすごさを実感した。
カントのこの著作とヘーゲルの精神現象学などは哲学の基本中の基本であり、考え方の幅を豊かにする。7冊という抵抗感はあるがこのような読みやすい翻訳は結局コストパフォーマンスに優れると思う。