現在は冷酒が花ざかりだが、昔は冷やした酒を飲むという習慣はあまり見かけなかったし、夏はビール、冬は熱燗が普通だった。
それが、二〇年ほど前、ある作家の家に招かれた際、「菊姫大吟醸」というとんでもなくおいしい酒を頂戴し、冷酒にも目覚めた。一〇年近く前、「十四代」という酒に出合って、その豊醇さに圧倒されたことも大きい。
現在は各地の純米吟醸酒にコっている。純米酒とは、米と水だけで造った酒、吟醸とは良質な米の外側を四〇%以上磨きとり、丁寧に造り上げることを言う。
本書は、今日の地酒ブームを作り出した立て役者の一人であり、酒造技術指導家としても名高い著者が、“純米酒に非ざれば日本酒に非ず”という信念を中核において、これからの日本酒のあり方、味わい方についての透徹した問題提起を行ったもの。
日本酒について知識を記したというよりは、モノ作りの啓蒙書の色合いが強いので、その方面から読むのもよいかもしれない。酒に関する本は多いが、酒造りについての実体験に基盤を置いてここまで書ける人はほかにいるまい。
“純米吟醸酒はお燗をつけるとマズくなる”“ビールと同じく、お酒も造りたての生酒がおいしい”“春の全国新酒鑑評会で金賞を取った酒が完成度の高いものである”などという、チマタに流れる俗説がいかに間違っているかは、最初の一五ページほどを読んだだけですぐに分かる。そして、秋まで掛けて熟成された“秋あがり”の純米酒を水で少し割り、人肌の燗で飲むのが一番おいしい、という著者の主張にグングン引き付けられてゆく自分に気付く。
しっかり読むと心が揺さぶられる、純米酒的好著である。
(弁護士 木村晋介)
(日経ベンチャー 2003/03/01 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)
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そんな浮ついたイメージをこの本は一掃してくれるだろう。
世の中、「匠」ブームだの「本物志向」だのいいながら、
良酒を醸す蔵が絶滅の危機にあるのは何故なのか?
沢山の人に読んでほしい!!行間から栗香の漂ってくる本!!
私は淡麗辛口が良いとばかり思っていましたが、著者の純米酒の「飲み方」(これは帯にも載っているのですが)を教わっただけでも、この価格の価値は十分にありました。
そして、内容は、醸造用アルコールを添付するようになった歴史から、本当の純米酒の作り方、これからの純米酒の方向性などなど、本当にわかりやすい言葉で綴られています。
著者が「酒造技術指導の第一人者」と言うことから怖い人というイメージを持って臨みましたが、そこにあったのは純米酒を心から愛する人からの、ひたむきなメッセージでした。
良い本に久しぶりに出会えたと言う気持ちです。
著者は1924年生まれの、酒造りの指導を長年やって来た、「酒造り界の生き字引的存在」であり、彼は「日本酒とは純米酒のことである」と断言する。
アルコールを添加した「醸造酒」に「本物」を意味する本をつけて、本醸造などと呼んでいることのおかしさ、吟醸酒を御燗したらいけないという俗説のおかしさ、純米酒を割り水して飲む方法、の紹介など内容は多岐にわたる。
彼はまた、日本酒造りは原料にお金がかかる!ゆえに、一定の値段以上に下げることは不可能だと説く。その上で、スーパーの店頭などにならぶ、びっくりするほど安い日本酒には「三倍増醸酒(アルコールを添加で辛くなった酒に糖を加える方法)」や、「液化仕込み」などの、到底酒造りとは思えない技術が使われているということも紹介している。
彼が素晴らしいのは、その酒造りの分野において常に消費者にとっていい酒がいい酒であるという視点をもってことのみならず、その他の産業においても本物を作ることが消費者に支持される近道だとしている点である。
お酒についての類書で今一つはっきりしなかった点が明解に書かれており、また、良心的で熱意のある蔵元の紹介もされており、一冊手元に是非おいておきたい本である。
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