登場する患者にはひとつの共通点がある。それは皆「純愛」のために心を患っているということだ。しかし彼らの恋愛とて特殊なものではなく、どこにでも転がっていそうな恋愛だ。風俗店で働きながらその客を愛した女性、離婚を要求する妻をいまだ愛し続ける男性、インターネットで知り合った人妻が忘れられない男性など。あえて特殊性を挙げるとすれば、彼らが一様に自分の恋愛を「純愛」と呼ぶ点だ。著者は彼らの言う「純愛」を奇妙に思い、それを「単に精神を病んだ人のみならず、今の若い人たちに広く信じられている」と感じている。「純愛時代」という題に込められているのも、この考えなのである。「純愛」という、著者にとっては奇妙な形の恋愛が、今の時代の主流になっているというのだ。
しかし本書を読んでもわからないことがある。新しい形の恋愛、著者には奇妙に思えた「純愛」。その実態とは何なのか、それが伝わってこない。彼らの「純愛」の症例を通して著者は何を訴えたいのか。「純愛」を精神病理学的に分析し警告することこそ、精神科医としての著者の役割ではないのだろうか。
本書を単なる「お話」として読むには大変おもしろい。しかし精神科医が記す精神医学の書としては物足りない。「新しい時代の、おかしな恋愛スタイル」を並べただけで終えてしまったところが、非常に残念である。(鮎村有紀)
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読み始めた当初、「純愛」=「駆け引きや損得などを、一切考えない恋愛」だと勝手に解釈していたため、読んでいて、しこりの残る感があった。
あとがきによれば、「純愛」=「とびっきりの(ドラマチックな)愛」だと解釈してよさそう。
個人的には「とびっきりの(ドラマチックな)愛」を「純愛」と呼ぶことには違和感があるなぁ…。
あとがきに「若者たちは愛に心底憧れていながら、他方で、とことん愛に絶望している」とあるが、当を得た言葉であると思う。愛への憧れと絶望、そのはざまで揺れ動く私たちは、どのような『愛』の形を作り上げていくのだろうか。
診察の記録がメインとなっている本だが、あとがきが面白い分、著者の分析や考察をもう少し多く、そして深く読みたかった。
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