本書に収められた作品のすべては著者ガルシンの強烈な道徳心に裏づけされており、短編でありながらも非常に味わい深く、読む者の内面にまで訴えかける力を持っています。『紅い花』で描かれる、愚かながらもこの世の悪と全力で戦おうとした魂、『信号』で描かれる、パッとしないけれどもとびきり善良な魂などは、まさにガルシンが愛してやまぬものだったのでしょう。このように優しく、そして鋭敏な知性を持っていた彼が、美しいものが敗れゆく世の中に対し絶望し、自ら命を絶とうとしたのは当然のことだったのかもしれません。
しかし却って、その作品から強固な「生きようとする意志」を感じ取れるのは気のせいではないでしょう。彼と世の中との戦いの産物であるこれらの作品は、狂気に苦しみながらもなお生きようとする必死な気持ちに満ちているのです。ぜひ本書を手にとって、その気高い魂に触れてみてください。神西清の名訳のため読みにくさも感じさせません。