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約束の地
 
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約束の地 [単行本]

樋口明雄
5つ星のうち 4.9  レビューをすべて見る (7件のカスタマーレビュー)
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第12回(2010年) 大藪春彦賞受賞

出版社/著者からの内容紹介

第12回大藪春彦賞
第27回日本冒険小説協会大賞
エンタテインメント文学賞をダブル受賞。
そして、
朝日新聞・週刊現代など書評でも大反響。

大長編の徹夜本。価値ある一冊!

相容れぬ者たちが共に生きるため、男は静かに立ち上がる。

農作物を荒らす、人に危害を加える──など、野生動物被害を調査し対応する公的機関「野生鳥獣保全管理センター」。

その八ヶ岳支所に出向した環境省エリート役人、七倉。

自然に満ちあふれ、のどかに見えるこの地で彼を待っていたのは──。

腰掛け人事、と冷ややかに彼を見る部下たち。
猟を法で規制され爆発寸前のハンター。
密猟でもいい。作物を荒らす「害獣」を殺して欲しいと願う農家。
ヒステリックな動物愛護団体。
親の利害関係が生み出す子供のいじめ。
さらに。
ヒトを「エサ」だと認知し、襲い始めた巨大野生動物。
人間の心の闇が生み出した死亡事件。

四面楚歌のこの地に、孤独癖のある娘と二人でやってきた七倉がなすべきこととは?

山積する難問題に真摯に向き合う男の静かなる決意。日常生活の愛おしさ。家族愛。そして息を呑むアクションシーン。

興奮と感動の書下ろし一大巨編!

実力派作家の才、ここに開花。


登録情報

  • 単行本: 516ページ
  • 出版社: 光文社 (2008/11/21)
  • ISBN-10: 4334926428
  • ISBN-13: 978-4334926427
  • 発売日: 2008/11/21
  • 商品の寸法: 19.6 x 13.4 x 3.2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.9  レビューをすべて見る (7件のカスタマーレビュー)
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17 人中、15人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By kavu
形式:単行本
読みごたえのあるボリュームなのに、あっと言う間に読み終わったしまいました。ここ数年で読んだ本の中で、最も共感出来て感動した本です。
山を壊す人間、山を追われる動物、里に下りた動物は畑を荒らし、ヒトを襲い始める。
これは警告では無いでしょうか?人間の消えることの無い、果てしない欲望の末に起きるであろう近未来を描いているようにも思えました。
作者が書いた南アルプスの地に、私も同様に十年以上暮らしています。
山が何か変わってきた。川が何か変わってきた。何よりも動物達に落ち着きが無く、妙な苛立ちを持って里に下り始めています。農作物の被害のみならず、人に遭遇して怯えたクマが攻撃する事件も増えてきました。
深く、考えさせられた作品です。
このレビューは参考になりましたか?
4 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By アイク トップ500レビュアー
形式:単行本
「力作」というのが一番ふさわしい感想でしょうか。

環境省のキャリア官僚として南アルプス山麓の関連施設に赴任してきた主人公がその地で出会う人々と自然、そして動物たち。
一見、悠久の時の中で不変とも見える自然の裏で音もなく浮上する破滅の予感。
地元猟師たちに語り継がれる巨グマ”稲妻”を追う主人公たちの前に更なる「荒ぶる神」が襲いかかる。
人が山を狂わせ、そのしっぺ返しを喰らう状況の中で人と野生動物、そして自然との共生を模索する主人公たちが直面したものとは?

主人公をキャリア官僚候補とすることで、まず問題点とそれを取り巻く状況を客観的に描くことに成功しており、読み手にも事の複雑さが伝わってきます。
絶滅が危惧される動物がいる一方で動物たちによる農作物被害も深刻化し「駆除」名目での狩猟すら自由にできなくなった狩猟者たちの不満も高まってゆきます。
その根底には温暖化による気候変動の影響、植林政策の失敗による山林の荒廃、無計画な開発や廃棄物による土壌汚染の影響が見え隠れします。

これだけで十分な内容だと思うのだが過去に起きた惨劇に起因する殺人事件を巡るミステリーや主人公のひとり娘が学校で受ける苛めの問題も絡んできます。
普通に考えれば詰め込み過ぎで消化不良になりそうなものなのだがきちんと着地させている辺りはお見事。
あとがきでも書かれているように長期にわたる綿密な取材と語るべき内容をしっかりと見定めてぶれていないからでしょうね。
ですからボリュームはありますが読みにくくはありませんし、かといって薄っぺらな物語では終わっておらず、実際読んでいる内にいろいろと考えさせられます。

最大の読みどころは荒ぶる神として「人食い」となった巨大なケモノとの対決なのだが、ここはやはり「もののけ姫」を連想させますね。
巨大な山の主を病に罹らせて正気を狂わせて人里へと向かわせたのもやはり人間が原因なのだ。
失われた仲間の命や人間の業を背負った上で愛犬と二人、この獣に対峙する覚悟を決めた主人公が森の奥深くで迫りくる巨大な獣に銃口を向けるクライマックスは鬼気迫るものがあります。

決して派手な作品ではありませんが良質なエンターティメントとしては正に「鉄板」。
おススメです。
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8 人中、7人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By magpie
形式:単行本
冒頭で描写される殺人事件をはじめ、張り巡らされた伏線がクライマックスへ向かって収斂していく様は見事。
第一級のエンターティメント冒険小説として一気に読み切れる、と同時に、安易に流れることなく重いテーマを描き切る、という困難な両立を果たした大作である。買って損はないだろう。

本書の舞台は、八ヶ岳山麗の架空の市「八ヶ岳市」。
時代はほんの少し未来を想定し、架空の野生鳥獣管理保全管理センターを設定している。
主人公は、その八ヶ岳支所へ赴任してきた環境省キャリア官僚の七倉航(ななくら わたる)。
妻を喪い、娘と二人での赴任である。
七倉を着任早々に迎えたのは、巨大な体躯の熊が農家を襲い死者がでた、という知らせだった。そして事件の調査を進めるうちに見えてきた相手は、熊を超える恐怖の巨大生物だった。
だが、その生物の存在が、最終的な脅威ではなかった。
やがて明らかになる真に恐るべき「闇」は…。
いや、これ以上書くとネタバレになってしまう。口がむずむずするけれど、ここは自重しよう。
ホラーと冒険小説を能くする作者の面目躍如である、とだけ言って置こう。

七倉が任地で出会う人々は、どいつもこいつも一筋縄ではいかない連中だ。「独立愚連隊」のようなワイルドライフ・パトロールの同僚たち、非協力的な住民たち、旧来のやり方にとらわれた猟師たち、科学的調査すら否定し感情論だけで野生動物の“保護”を叫ぶ“環境保護団体”などなど…。

-- 人が山を汚し、じわじわと殺しつつある。
 その苦い現実をどうにか変えて行けるのか。--

これは大変重いテーマだ。
だが、主人公たちは現実の現場と同じように、限られた予算と人員と制約の中で、出来ることを地道にやっていくしかない。
そこには、安易な万能の解答など存在しないのだ。

仕事では人間模様と現実の困難さに翻弄され、私生活では娘がいじめにあいはじめる。
どちらを向いても問題だらけの四面楚歌生活。
しかし、七倉は逃げない。
悩み、苦しみながらも任地に踏みとどまり、問題に向き合い、課された制約の中で己に出来ることを力を尽くしてやろうとする。
その姿に「一所懸命」という言葉を想起した。
昔、武士が領地を守るにあたって「一所懸命」という言葉が生まれたという。
自分にとって身命を捧げるべき「一所」はどこなのか。
いや、自分はどこを「一所」と“する”のか。

-- どこでどう生きていくのか。
自分が根を下ろして、生きていく場所は…? --

周りの人たちとのかかわりや、土地への愛着などなど、そんな有形無形のものを全部ひっからげた「自分の居場所」。 共に生きること。
これは樋口明雄氏の小説に繰り返し現れるテーマだと思う。
単に地面のある地点、あるエリアをさすのみならず、人や獣や大地との絆を広く包括する「自分にとっての一所」を見出していく。
このテーマを担って本書の物語を生きるのが、主人公の七倉航であり、彼を取り巻く人々なのだ。

そしてもうひとつ、この作品の底流をなすテーマとして「死」がある。
愛しい者の死を、残された者たちがどう受け止め、生きていくのか。
重いテーマだが、繰り返し本書で語られる大切なテーマだと思う。
それぞれが抱える死の重み。そして物語が進むにつれて、変化してゆく死との関わりのありよう。
それは、先に述べた「どこをどのように一所とするのか」というテーマとも深く関わっていると思うのだ。
そういった人の心の変遷と成長もまた、本作の見所のひとつではないだろうか。

本書は重いテーマをはらみつつも、娯楽としての醍醐味を存分に堪能させてくれる。
もしもページ数に及び腰の方がおられたら、買って損はないはず、と重ねて申し上げたい。
ぜひ、主人公とともに困難を潜り抜け、あのラストシーンで清冽な八ヶ岳の冬の大気を感じて欲しい。
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