今でこそ『あさきゆめみし』が代表作のように言われているが、大和和紀さんの作品というと、シリアスとギャグが一緒になった、涙あり、笑いありの作品も多かった。『はいからさんが通る』もそうだったし、この『紀元2600年のプレーボール』もそうだ。
作品自体も好きだけれど、一番好きなのは、舞台となっている青葉藩。昭和を迎えたというのに未だに城を持ち、武士の、お庭番の、といっている時代錯誤でへんてこな、でも素敵な街。こんな街があったら…、とマンガの中なのが、残念になってしまう。そして、藩主である江戸っ子・竹千代やお庭番の伊賀丸、にしきさんに虚無之介さん…といった個性的なサムライたち。
こんな街で楽しく、素敵な仲間たちと繰り広げる野球と恋のお話。私が一番好きなのは、甲子園に行くと決まった後、かわら版屋(新聞社)が訪ねてくる所だ。このへんてこな青葉の街の様子が、本当に楽しく描かれている。
けれど、戦争という大きなうねりの中で、変わらざるを得なかったものも描かれ、「また会おう」という果たされなかった約束に、切ない思いもする。
それでも彼らは今でもどこかで野球をしているのだろう。そのまま雲の中に分け入って。