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紀元二千六百年 消費と観光のナショナリズム (朝日選書)
 
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紀元二千六百年 消費と観光のナショナリズム (朝日選書) [単行本]

ケネス・ルオフ , 木村剛久
5つ星のうち 4.7  レビューをすべて見る (7件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容紹介

戦時の1940年、神武東征から二千六百年というこの年、帝国の臣民たちは史跡観光に、デパートや新聞社による愛国的な催事に、進んで参加し、国史をまとめた物語に夢中になっていた――。南米移民を含めた臣民たちがこぞって参加した大イベントを通して、「暗い谷間」と呼ばれた時代のイメージを一新する、ファシズム日本の姿。気鋭の著者による大佛次郎論壇賞受賞後、第一作! 解説・原 武史

内容(「BOOK」データベースより)

神武天皇による建国から二千六百年とされた1940年、大日本帝国では万世一系をたたえるさまざまな記念行事がくり広げられた。帝国臣民は定時に宮城を遙拝し、皇国史を学び、愛国歌・作文の募集に応じ、聖地を訪れ、催事を見に出かけた。神社を拡張整備する勤労奉仕もいとわなかった。こうした大衆参加を促したのは国だけではない。新聞社や出版社、百貨店、鉄道会社などの民間企業も祝典をビジネスチャンスととらえていた。帝国全土にわたる消費と観光を支えたのは近代ナショナリズムである。

登録情報

  • 単行本: 384ページ
  • 出版社: 朝日新聞出版 (2010/12/10)
  • ISBN-10: 4022599723
  • ISBN-13: 978-4022599728
  • 発売日: 2010/12/10
  • 商品の寸法: 18.8 x 12.6 x 2.4 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.7  レビューをすべて見る (7件のカスタマーレビュー)
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By ソコツ トップ100レビュアー VINE™ メンバー
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斬新で面白い学術書である。紀元2600年=西暦1940年、帝国日本の臣民のあいだでは、愛国主義が消費を促進し、消費が愛国主義を扇動するような行為と感情のサイクルが盛況をきわめていた。神話がかった国史の物語のベストセラー化、御国を賛美する歌詞や作文の懸賞金つき募集の流行、愛国的な展覧会の活況、ブームとなった史跡訪問、といった具体的な事例を、新旧とりまぜた文献に加えビジュアル性ゆたかな資料群(絵葉書、ポスター、地図など)を巧みに解読することで、娯楽的なナショナリズムの沸き立つ当時の雰囲気を著者は鮮明にあぶりだしてみせた。実に学ぶところ多い。
なかでも特筆すべきは、この頃に活況を呈していた「帝国観光」を扱った数章であろう。神武天皇ゆかりの聖地をめぐる宮崎や奈良への聖跡観光、植民地への同化と差異化のジレンマのなかで独自の魅力が演出された朝鮮観光、そして日本によって文明化されたことが誇らしげに語られた満州への、とくに戦跡を中心とした観光旅行と、人びとは万世一系の天皇を奉じながら、各地を楽しくめぐった。各種のメディアや鉄道会社の働きかけによって、人々の観光熱はますます盛んになった。
こうした、必ずしも政府の強制によるのではない、大衆的なナショナリズムあるいはファシズムの隆盛を見落としては、当時の日本の政治・思想状況は理解できない、と著者は批判的な見解を提示する。また、帝国日本の事例を他の国とりわけイタリアとドイツに関する研究と比較しながら、戦時下の日本史のリアルを世界史のなかに位置づけようとも試みている。
かなり様々な学問的関心から、興味深く読める傑作だと思う。
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7 人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By INAVI トップ1000レビュアー
観光が盛んだったから紀元2600年は必ずしも暗黒一色ではなかったというのが繰り返しの著者の主張の一つ。
神武神話を求めての国内旅行もとい巡礼、差別とノスタルジーの交錯する朝鮮旅行、戦跡巡りの満州旅行と丹念な調査から掘り起こされる日本は、正しくディスカバー・ジャパンだ。
しかし、舶来ロンダリングに弱い日本人が陥りがちな「白人=中立客観=正しい」の色眼鏡に用心するなら、著者こそが「暗黒時代軍国日本」と左翼が声高に唱える「証拠」に不思議と拘泥していることに気づくだろう。あるいは、学者でない私には窺い知れない学会内での論争があるのだろうか?

昭和15年を大正30年と考えれば、大正が培った娯楽マインドが戦争景気(米国の禁輸措置や資産凍結までの日本は戦争バブルだった)に焚きつけられて燃え尽きる蝋燭のようにプチブルが遊びにうつつを抜かすことは、さして驚くことではない。
一方で、旅行など夢にも思わぬ田舎の貧困層もおり(この一部のなれの果てが満州開拓団だ)軍靴の音も日に日に高まっていたのも事実だろう。モノカラーの世界なんて当たり前になくって、多重的なグラデーションがあるのが世の常だ。
紀元2600年祭が終わってすぐに日本を覆った言葉が「祭りは終わった。さぁ働こう」国家もバカではないということ。
丹念な取材と論証は大いに評価したいが、結論的な部分で行き急いだ箇所があるのが残念とは、原先生と同じ気持ち。

本書の、外国人ならではの切り口は、旅の部分ではなく(この点は原先生はじめ先達もいる)終章の在外邦人とくに移民達の戦時体制を進める祖国日本との関わりではないだろうか。
シナや南洋の島で支配者然と暮らす者、満州に捨てるように移り住んだ者、差別の中で働くしかない者など、一つ一つは聞き知ることも、彼らが昭和15年の日本で一同に会していたという事実から俯瞰すると全く違う断面が見えてきた。
また、産めよ増やせよがあっという間に負債と化していた貧乏人のはけ口としての移民政策が、あっという間に頓挫したことで、日本の国策が一つの大きな選択肢を失い、満蒙に固執していったとの指摘は、そうした人口過多を解消できないままの現在日本につながる、外国人ならではの指摘として評価できる。
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2 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By sasabon #1殿堂 トップ10レビュアー VINE™ メンバー
「紀元二千六百年」(昭和十五年、1940年)というテーマは、日本近代史の研究者にとって関心はあったのでしょうが、本書のような視点で書かれた書籍をほとんど知らないことからも、扱いにくいテーマだったと思われます。ナショナリズムの問いかけはある種の勇気が必要なのかもしれません。
筆者のポートランド州立大学助教授のケネス・オルフ氏は大佛次郎論壇賞受賞した気鋭の学者で、口絵も含めて資料を駆使して論証していました。

本書の章立てを列記しますと、国史ブーム、大衆参加と大衆消費、聖蹟観光、朝鮮観光、満洲聖地観光、海外日本と祖国と並びます。
日中戦争が泥沼化していたという認識の昭和15年ですが、観光が盛んであったとデータと実態を展開しました。庶民の消費生活と観光スタイルから我々が学んだ歴史像とは違う側面から光をあてており、認識の修正を迫られる労作だと評価しています。愛国的なレコードが3000万枚も売れていたという活発な消費活動の実態も綴られていました。

第3章の「聖蹟観光」に書かれている「史跡観光はそもそも国家が国民にそうするように命じてなされるものではない(137ページ)」という前提が正しいかどうかは議論が分かれますが、本書はそれを起点として多くの事例を挙げています。

丹念な余暇旅行の社会的基盤が出来ていたのはその通りでしょうが、神武東征の「肇国の聖地」宮崎を訪れることや橿原神宮や畝傍山にある神武天皇陵への参拝に、国家の動員があったことは紛れもない事実でしょう。奉祝という名の国威発揚には不可欠な動きですし、大阪毎日新聞などマスメディアの応援も記されていました。日本旅行協会や出版社、各県の目論見も当然あったわけです。百貨店や鉄道会社の協力と推進なくして成り立たない一大事業でした。

吉田初三郎の図版や絵葉書も含めて紀元二千六百年の熱狂的な国家イベントを浮き彫りにしており、知っているようで知らない生活の一端を見せてもらいました。鉄道省『肇国の聖蹟』という旅行ガイドを見たくなりました。

290ページの筆者の言葉を引用すると「紀元二千六百年にあたっての、ダイナミックな大衆参加と消費主義の要素を無視することはできない。何千万もの日本人は、ゴム人形でも消極的抵抗者でもなく、心からこの国家主義的な、まぎれもなく愛国的な祖国の祝典を受け入れていたのである。人々は国史をまとめた物語に夢中になり、定時の大衆儀礼に参加し、愛国的な歌詞や作文をものし、愛国的な展覧会を見に行き、史跡を訪れていた。こうした行動を促進したのは国だけではない。印刷メディアや百貨店、鉄道会社といった非政府機関の働きかけも大きかった。」とあります。これらの動きが、広範囲な自発的参加であったとするならば、我々は何を学んできたのでしょうか。

第4章の朝鮮観光、第5章の満洲聖地観光で描かれている「同化と差異のジレンマ」は理解できますが、「植民地観光」はあったのは事実ですし、その費用等の具体的な提示は新鮮でした。ただこの「観光」目的で多くの日本人が朝鮮や満洲に訪れていたかどうかはもっと検証が必要でしょう。旅順観光などは特にそうでしょうが、生命線であり特殊権益の地であり、戦勝の地ですので、見学には一定の目的や使命、役割があったことでしょう。

とはいえ、類書で見たことのない記念碑の写真なども含めて、驚く事例ばかりでした。木村剛久氏の訳が読みやすいのも本書の利点でしょう。歴史観やイデオロギー、各人の立ち位置などから読み方は様々でしょうが、「紀元二千六百年」をタブー視することなく踏み込んだ論述を展開したアメリカの気鋭の学者に賛意を表したいと思います。
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