精神障害者による重大事件が起きるたびに、マスコミでセンセーショナルな報道がなされます。
ですが、加害者となった精神障害者が、どのようにして処罰され、または処罰されないで「治療」を受けるのか、
「刑罰」と「治療」とを振り分ける基準は何か、その基準に問題はないのか、その基準通りに運用されているのかということは、あまり知られていません。
本書では、精神障害者の刑事裁判で絶えず問題となる「刑法39条」と、それに関連する触法精神障害者の処遇を問題について、バランス良く解説されています。
刑法39条に対しては、様々な立場から異論が唱えられているところですが、著者は、それぞれの立場に配慮しつつも、客観的なデータ、精神医学的な知識、今の我が国で触法精神障害者の置かれている状況等を詳細に検討し、最終的に、刑法39条は必要であるとする立場に立ちます。
その上で、精神障害者に対する刑事裁判の、運用上の問題点について指摘することも忘れてはいません。
著者の論述は、「刑法39条を廃止すべき」といった主張に比べると、明快ではないかもしれませんが、あくまで事実から出発しようとしている点で、信用がおけると思います。
なお、本書によると、
最近、マスコミの話題になっている「新型うつ病」という用語には、
医学的な根拠はないそうです(188ページ)
このようなところにも、「事実そのもの」を大事にしようとする著者の姿勢が見られます。