精神障害をもつ人のための社会資源を網羅的に紹介した一冊。
法改正に合わせて改訂も重ねられ、編著者の問題意識や志、かけられたエネルギー量をひしひしと感じさせる良書である。
それだけに惜しい部分が際立つ。
この本の冒頭には読者に向けて「本書を活用するみなさん」に「本書を活用する前に」「現在の日本の精神障害者に対する制度や資源がどうなっているかについて」「必ず考えてほしい」との呼びかけがあり、それを受けて一番最初の章で「自立支援法とはどんな法律か」、その社会的な位置づけや、これまでの法律との異同などがたっぷりと扱われている。また、それ以降の章で述べられる具体的な資源の紹介の中でも、これまでの制度との違いや、現在の制度の問題点を論じている部分が多い。
しかし、この本のユーザーである「精神障害のある人と家族」に対し、これはいささか過重な期待ではないかと感じられる。
自分の狭い見聞のみからでも、当事者の方々は、医療につながり診断・治療を受け始める段階までで既に、訳の分からない精神症状そのものによって生じる苦痛、当たり前に思い描いていたライフコースに大きな障壁が立ちふさがってしまった落胆、「精神障害」に対する世の中の、そして自分たち自身の持つ偏見といったものに直面し、消耗し、精神的に疲弊しておられることが多いと感じられる。そしてその先にも、我が国の「申請主義」のため、自分を支える資源について自ら情報を求め、申請し、更新を続けねばならないという重い負担が待ち受けている。
こうした状況の中で最優先されるべきは、この方々がまずは最小のエネルギーと最短の時間で必要な資源にたどり着けるということであり、彼らに、問題意識を持ち、歴史的・社会的視点から現状を見ることができ、よりよい制度に向けて声を挙げていけるような「意識の高い」当事者になっていただくことは二の次ではないだろうか。
また、この本は一貫してQ&A方式で書かれているが、これを読みこなすには、自分の持っている「これについて知りたい」という切迫した関心をいったん横に置き、そこに示された「誰か」の問題意識や興味関心に添っていくという内的作業が必要になる。この労力もぜひ省きたい。
例えば、第一部を「実践編」として各種制度の内容、利用のしかたに関する必要最小限の情報を(Q&A方式ではない形で)紹介し、第二部を「理解編」として編著者の問題意識を十分に盛り込んだ形にしてはどうだろうか。それだけでこの本の価値は飛躍的に向上すると思われるし、それこそが編著者の目指す「利用者本位」の編集ではないかと思う。