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精神鑑定とは何か―責任能力論を超えて―
 
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精神鑑定とは何か―責任能力論を超えて― [単行本]

高岡 健
5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (2件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容紹介

精神鑑定はどんな手続きで実施され、何を鑑定し、裁判にどのような影響を与えるのか。精神鑑定の基本と同時に、責任能力鑑定を偏重しがちな日本の司法における情状鑑定の重要性を説く。近年注目されている自閉症スペクトラム障害の精神鑑定についても言及。

内容(「BOOK」データベースより)

「責任能力あり・なし」の議論を超えて、社会が“罪”と向き合うための公正なまなざしの意味を、鑑定経験豊かな精神科医がやさしく説く。

登録情報

  • 単行本: 208ページ
  • 出版社: 明石書店 (2010/10/29)
  • 言語 日本語
  • ISBN-10: 4750332925
  • ISBN-13: 978-4750332925
  • 発売日: 2010/10/29
  • 商品の寸法: 18.8 x 13.2 x 2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (2件のカスタマーレビュー)
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By Gori トップ500レビュアー VINE™ メンバー
著者の高岡健氏は、1953年生まれの精神科医。「診療の合間を縫うようにして、精神鑑定を行っている」
いわゆる、精神鑑定に従事する医師は、診療を行わず、鑑定だけをする職業鑑定医がおり、鑑定屋と蔑称されているが、
その理由は、臨床経験の少なさに源を発している。

さて、この本の存在意義は、まえがきに著者が記しているとおりである。
「いま、精神鑑定は、被疑者や被告人をことさら、無責任能力者に仕立て上げ、負うべき罪から逃れさせようとしているという
 非難のまなざしにさらされている。誤解にもとづいているとはいえ、この非難のまなざしに根拠がないわけではない」
先ずこの誤解を解くことである。
さらに、鑑定が犯罪の理由を精神障害に求め、「負うべき罪から逃れさせ』たことで、その精神障害は犯罪を生みやすいとの結論に
導いてしまうことの誤りもこの本は指摘している。
さらに、精神鑑定医の地域格差、未熟さにも言及する。著者は、ある若い鑑定医が、診断マニュアルに当てはめただけで
成育歴を確認しないまま、アスペルガー症候群の診断をするというとんでもない間違いをしている例を引いている。

精神鑑定に臨む医師の職業倫理を問うとともに、
現代社会のあり方が、精神鑑定のあり方をも規定するという著者の考えに大いに賛同するものである。
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By 懸垂百回 トップ500レビュアー
ここ数年のあいだに出版された,精神鑑定や精神障害犯罪者に関して書かれた一般の書籍に目を通すと,出版の意図や内容に,以下の3つの事情が関わっていることがわかる。

第1に,2005年7月から医療観察法(=心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律)が全面施行されたこと。これによって,重大な犯罪行為を行った精神障害者への処遇が変わったという事情がある。加えて,この法律に対しては多くの批判がある。「多くの」批判というのは,相異なる立場からそれぞれ批判を受けているという意味だ。つまり非常にややこしい。

第2に,2009年5月からスタートした裁判員裁判がある。鑑定人は,市民である裁判員に対して自分の意見を述べ,説得する必要が出てきた。しかし,こと精神鑑定(特に被告人の責任能力に関するもの)については,一般人の理解が得られにくいと考えられている。

第3は第2の点とも関係するが,精神鑑定に対する社会の無知・無理解がある。重大な加害行為を行ったにもかかわらず,場合によっては罪に問われないことがあるという,いささか我々の直観に反する結論を,正確に理解してもらうのは難しい。

精神鑑定や責任能力に対する誤解を助長・拡散したのが,日垣隆『そして殺人者は野に放たれる』だ。浅薄な理解と杜撰な取材に基づいたこの本が,それなりに読まれ,一般読者から高い評価を受けている,ということ自体が,この問題に対する社会の無理解を如実に表している。

本書も,上記の3点に留意して書かれている。具体的には,

1. 精神鑑定医にはどのようなスキルや経験が要求されるのか。
2. 精神鑑定の種類。これは時期や依頼者による区別として,起訴前鑑定・公判鑑定・私的鑑定があるほか,鑑定内容による区別として,訴訟能力鑑定・責任能力鑑定・情状鑑定・受刑能力鑑定がある。これらの異同は何か。運用上の問題は何か。
3. 「精神障害者の犯罪」に対する,現在の法制度はどうなっているか(これが医療観察法である)。その問題点は。
4. 少年事件と大人の事件で,鑑定に違いがあるか。
5. 自閉症スペクトラム障害(=広汎性発達障害。アスペルガー症候群はこの一種)に対して,裁判所や鑑定人はどのように応じてきたか。

といった点について触れられている。一般向けに書かれているから,掘り下げた叙述は少ないが,幅広い論点に言及されているのが特徴だ。具体的な事例で説明されているから,分かりやすくもある。

1つ注文をつけるとすれば,精神鑑定と犯罪被害者(や遺族)の関係についても何らかの説明が欲しかった。たしかに,精神鑑定は被疑者・被告人の主観面に踏み込むものであって,被害者が関心をもつ犯罪の客観面(重大性)とは一応は無関係だ。しかし,著者が重要性を強調する「情状鑑定」は,結論として刑を軽減する方向で作用する以上,刑を加重する事情となる被害の重大さと向きあう必要があると思われる。裁判員裁判ともなれば,この点がまさに問われるのではないだろうか。

本書の中で「刑法学者の浅田和成」(p.101。p.204も)との記述があるが,これは「浅田和茂」の間違いだろう。ともあれ,巻末に引用・参考文献が掲げられているので,その気になれば疑問点をさらに調べることができる。弁護士の校閲も受けているようで,用いられている法律用語も概ね正確だ。難解な箇所もあるが,多くの部分は読みやすい。このように丁寧に作られた本には好感がもてる。タイトルに興味がある人にはおすすめの1冊。
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