「鉄の扉の奥に押し込めることを正当化するような精神状態など、本来ないのだ」というバザーリアの考え(p37)をもとに、精神病院(精神病床ではなく)をなくしたイタリアの精神医療のプロセスが、丁寧に描かれています。
たとえば、精神病院を閉めるための法律180号を制定するには、「病院がなくても患者を支えられること」「患者を支えるために、もっと良い装置、つまり地域精神保健サービスがある」という点を証明しないといけないのですが、1970年代のイタリア二大政党がともに手を取り合って制定を後押ししたそうです。わが国ではとても考えにくいことで、精神病院をなくすことは正しいことなのだという信念の強さが伺えます。
わが国で、精神病院を無くそうという機運が高まることはあるのか、と考えると、積極的に「なくそう」というよりは、地域での生活支援を充実してゆこうという考え方が広がっているようです。本書では、「狂人の復権」という用語とともに、日本で行われている「べてるの家」や「包括型地域支援プログラムACT」「東京ソテリア」などを紹介しており、精神医療もだんだんと変化しているのだなと知りました。