『精神現象学』は原書だと通読するだけで20年はかかると言われており、真剣にヘーゲルを学ぶ上で適切な翻訳書は必携である。
とは言え、ドイツ人が読んでも難解なヘーゲルの文章を日本語で判り易く訳すなど、何人にも不可能な仕儀である。
本書は長谷川宏訳とは真逆で、ヘーゲルの言葉になるたけ忠実に従おうという誠実さが感じられ好感が持てる。ヘーゲル研究のテキストとして十分利用できるものである。しかし〔 〕内の訳注は蛇足であり、初心者をミスリードする懸念が無きにしも非ずだ。尤も『精神現象学』を手にするのがヘーゲル初心者とは考えられず、それ故、樫山も訳注という形で自己の見解を記したのであろう。
お勧め度は★★。
『精神現象学』自体、一般読者にお勧めできる代物ではないからである。