現代の精神分析は、自我心理学から対象関係論にパラダイムシフトしており、
フロイト−>クライン−>ビオンへと、その進歩は、物理学でのニュートン力学
から量子力学、相対性理論への飛躍によくたとえられます。
ビオンの巨大な業績は、世界中の分析家に多大な影響を与え続けていますが、
例えば中核的な著書であるセブン・サーヴァンツ「精神分析の方法」を少しでも
本気で読んでみようとすればわかりますが、その難解さは、最高峰、エベレスト
の様に、読む者を容易には近寄せません。
この本は、難解なビオンをわかりやすくその本質を浮き彫りにして、読む者を
滋養してくれます。読書の体験そのものが、ビオンがcontainer/contained の概念
の中で精神分析のモデルとしてあげた母親と授乳される乳児との関係で表したこと
を具現化しているように私は感じました。
ビオンが提示した ♂/♀ -♂/-♀ Ps<−>D K L H noK -K -L -H α β
O T グリッド 破局 頂点 などの不飽和な概念や視点が、読む者の「考えること」
という考えるための装置を発達を刺激し、促してくれるようにも感じました。
「終章 ビオンに学べないこと」 では、精神分析とは何か 改めて考えさせられます。
「ビオンの考えをマスターしてビオンのようになることではなく」
「ビオンと2者関係に留まるのではなく、第3の立場を自らの内に確立し」「ビオン
と対話すること」そして「自分自身の考えを持ち」、私自身「である」こと。
「精神分析は、何かを発見するためのさらなる問いなのです」
精神分析を学ぶ者の必読の書であり、著者の「対象関係論を学ぶ」と併せて読むと
理解が深まると思います。