シュレーディンガーといえば波動方程式があまりにも有名ですが、晩年は意識の科学ともいうべき部分に非常に関心を寄せた人物である。脳科学者でも、その後年は意識・心の科学に傾倒する人が多いが、あくまでサイエンス的な見方を脱するものではないことが多い。一方でこのシュレーディンガーの意識論は、宗教を含めた思想的観点の色濃いものとなっているのが他の意識論と一線を画する。
本書からも読み取ることができるが、シュレーディンガーの意識論の根底には東洋哲学の思想が根強く息づいている。特に、時間・空間を主観的な観点から考察し、それを意識問題と比較するというやり方は、インド哲学、もしくはイスラーム哲学の本質論に近いものがある。そういった意味で、他所にはない独特の意識論が展開され興味深い。
しかしながら、記述範囲が広くなりすぎているわりには紙面をそれほど割くことをしていないため、思いつく考察を書き散らしたという感を払拭できない。どちらかといえばシュレーディンガー自身が普段から考えていたことを書き残したエッセーという感じである。したがって、サイエンスを求める読者には、シュレーディンガーの著作ということを考えるとやや不満の残る点もあると思われる。そういうことも含めて星4つとした。