戦前は商社マンとして、中国、インド、米国と28年間の海外生活を過ごし、日米開戦直前に戦争に反対して三井物産を退社、戦後は自営農として悠々自適の生活をしていた処を、齢78歳で第5代の国鉄総裁職を引き受けた石田禮助の生涯を痛快に記した一冊である。
上司に対しても思ったことは率直に言い、部下にとっても「怖い上司」であったが、一方で人情に厚く、涙脆かったようである。問題山積みであった当時の国鉄総裁を引き受ける者が殆どいない中、天国に行く為の「パブリックサービス」として6年の間、総裁職を全うした。国会対策など常人であれば憂鬱な役目も「怖いものなし」の明治男には何でもなかったようである。財界人が引退後パブリックサービスとして政府系企業の要職に就くことが困難な現代にあって、かくあるべきではないのかと思わせるような話も興味深い。