書名で内容を類推することが困難な書物は少なくない。
同書もそう。
2008年春に講談社から出版された「新・大人の粋」の文庫版で、
いわば談四楼的「礼儀作法入門」。
日刊ゲンダイで長期連載されたコラムのうち、
江戸前の言葉や、
その言葉に伴うしぐさの美しさについて書かれた文章が中心だ。
でも、タブロイド紙の読者を満足させてきたコラムだから、
オツに澄ましたマナー読本であるはずがない。
著者や仲間が失敗したり、踏みつけられたり、
大恥をかいた際のエピソードが満載で、
寝転びながら、わはははははは、と楽しんだ。
他人のしくじり話は、とっても面白いのだ。
家元談志、談春、志らくといった立川流はもちろん、
桂文楽、柳家小さん、桂文治、
古今亭志ん朝、
林家木久扇、林家こん平、古今亭志ん駒――
といった面々も随所に顔を出す。
落語ファンには嬉しい限りだ。
おかしくて、楽しくて、少しタメになって。
時に、くだらなくて、しばし、ほろ苦い。
悔しさと恨みと劣等感をひと一倍抱え、
そいつらを奥歯で噛みすりつぶし、
涙の塩味で飲み下した経験がなければ、
こうした味のコラムは書けないのではないか。
冒頭、「礼儀作法」などと書いてしまったが、
つまる処、「粋」だの「礼儀」とかは、
人の気持ちをわかろうとするココロなのだろう。
大人として身に付けていたいのは
読み書き算盤に加え、
分別と了見と気働きのある立居振舞だ。
かくありたい、との気持ちで、
わたしは、愛読書である山口瞳先生の「礼儀作法入門」の隣に同書を並べて置いてみた。