コロンビア大の教授が、当時の日本人留学生が作成した原稿を監修したアメリカの会社法に関する概説書。
とてもよくまとまっている。
この手の本は、北沢先生の「デラウェア会社法」もしくはナットシェルの邦訳くらいしかまともな日本語文献はなかったので、とても価値が高い。最近のファイナンスとの複合的な問題状況も意識されていて、とても好印象。私の学んだ学校では、会社法は「閉鎖会社」編、「公開会社」編と2学期に分けられて講義されているほどボリュームが多いが、良くここまでコンパクトにまとめられたものだと思う。
不満点としては二つ。
一つは、Agencyに関する記述が薄いこと。この概念は、かなり独特な要素をもつ概念で、私が西海岸のロースクールで講義を受けた際には、かなりじっくりと時間をかけて講義されていた。また、その会社法上の位置づけは難解で、JD生もさじを投げるものが続出したほどだった。しかも、これは会社法上の重要概念である「fiduciary duty」の理解にも重要な制度であり、日本人がアメリカの会社法を理解する上で記述に十分配慮される必要があったのではないかと思う。(とはいえ、弘文堂刊のアメリカ代理法ほどのボリュームは必要ないが)
二つ目は、タイトルに「米国」とつけながら、記述の大半がデラウェア州法及び連邦の関連諸法規に限定されていたこと。
私がカリフォルニアで学んでいたこともあるが、カリフォルニア州の会社法はデラウェアとは思想を異にしている部分が多く、判例もかなり独特の判断がなされていることが多いように思う。特にベンチャー投資の場面では、正反対の結論がでているケースもある。
このあたり、アメリカで良く出回っている概説書(Gilbertなど)は、カリフォルニア州やテキサス州の法律も必要に応じて言及されており、全体の分量は本書と変わらない中で、アメリカ会社法を鳥瞰できるようになっているものもある。
著者の研究していた環境に左右されることも多いので、無いものねだりかも知れないが、本書を手に取られる方には是非、州ごとの会社法の違いはこの本で指摘されている以上に差が大きいことを意識した上で、読み進めてもらいたいし、できればGilbertなどのやさしめの概説書にも目を通してもらいとも思う。