日本で図書館が欧米並みに近代的なサービスを始めたのは戦後になってからだと言っても過言ではない。その範はアメリカであるにも関わらず、図書館経営の実態は誠に似て非なるものである。その現実を日本の研究者とアメリカの現場の図書館員とで、総動員して執筆されたのが本書。実に網羅的で、余すことなき観点で編集されているが、総花的で運営の実像を描ききれているか、と云えば難しい。
その理由は、マルテルの『超大国家アメリカの文化力』が描き出しているとおりアメリカ連邦政府の文化政策は、フランスや日本のように直接的な関与をしない、ことが前提にあり、州を中心にした地方に活動の実態と行政がある。また、労働組織や経営組織の意思決定システムなどもかなり異なり、市民の関与も多様である。また特にボランティア活動を日本では只働きと勘違いしているが、アメリカでその活動に参加すると無形のさまざまな割引などが提供され、無給ではあれ、他の形でさまざまな特典が実際には与えられている。それは金額換算すると相当な価値になるものもある。このように図書館に関わることは、かなりの経済活動にも値することなどには生憎言及がない。そうした細部、アメリカの社会生活の多様性を踏まえない限り、ある意味では画餅的な描き方で残念である。アメリカに留学しても、地元のコミュニティに溶け込んで生活しないと見えない部分が多数ある。
本書に限らず、アメリカの図書館界の動向は日常的にも多数報告され、アメリカの司書資格であるMLS取得者がいるにも関わらず、専門職制度の社会的な位置づけや差異が精確に判るには、日本でもアメリカでも現場を経験した人にしか実感できないくらいに異文化であることが見えないのが現状ではなかろうか。
有益なのは、統計資料の訳かもしれない。アメリカの図書館統計は、多種あるがそれが1冊になっているのは重宝である。
本書は電子版ならば、国立国会図書館のサイトからダウンロードできる、電子版は調べものには実に便利である。