新書はタイトルで売る、らしいけれど、この本はタイトルで損をしているのではないかと案じています。
「米原万里」と聞いて通訳翻訳、異文化コミュニケーション、あるいは下々のジョークを期待する人ばかりでなく、
老若男女だれが読んでも、どこかで我が身に引きつけてものを考えることができるのに、
こんなタイトルではまじめな普通の読者に手を出してもらえないかもしれない・・・
中身は亡き米原万里さんの講演が4本、
「1.愛の法則」「2.国際化とグローバリゼーションの間」は高校生向けの講演(2005, 2004)、
「3.理解と誤解の間〜通訳の限界と可能性」は県の文化講演会(1998)、
「4.通訳と翻訳の違い」は新聞社主催の受賞記念講演(2002)で、
1など、うぶな高校生が聞いたらびっくり、先生方もどぎまぎの発言もあるけれど、
実は深い真理をおもしろくわかりやすく聞かせて、どこかで必ずためになる話ばかり。
講演録を安易に新書で売る最近の風潮には感心しないわたしですが、
これは例外的に読んでよかったと思いました。
通訳・翻訳を通して人間同士(ときには動物とも)のコミュニケーションを追求した米原さんは、
書いても一流なら、しゃべりも一流。一度ぐらいおはなしを直に拝聴したかった、と残念でなりません。
巻末に著作一覧もついているし、米原万里入門の一冊としてもおすすめできます。