本書、ともかく読んで欲しい一冊! 専門書ではあるが、写真も多く、専門的な術語に対する知識や、心理学に対する予備知識も特に要求しない内容であるから心配はない。臨床的な記述も多いので、文章は明晰であり、むしろ読みやすいものであると言える。前半は箱庭療法に対する説明、後半が実際の症例の記録であるが、箱庭を舞台として投影される様々な内面のドラマの物凄さに圧倒される! 本書を読むと、われわれの心の奥底には力強く創造的な神話的イメージが潜んでいるのだということを実感させられる。箱庭作りに没入している人にとっては、箱庭こそが世界の全てであり、箱庭の中において世界の創造と没落、そして再生、暴力と破壊、そして癒しと和解のドラマが文字通り自分の人格と存在を賭けて展開されるのである。もちろん、社会に適応し、日常の生を円滑に生きていくためには、そういう内面的な葛藤の巨大な振幅は抑圧され、矯められなければならない。例えばオウム真理教の事件に見られたように、そうした要素はむしろ、カルト教団に典型的な誇大妄想や狂気と結びついて行くような危険を孕んでいるからである。しかしながら、だからこそいわゆる「正常」な「常識的」な人は、本書に症例が出されているような「すごい」箱庭は作ることができないのである。河合隼雄氏は、ノイローゼになる人は「選ばれた人」「特権的な人だ」と言う。そうした言葉の意味を実感させられる内容。カウンセリングが進み、クライアントが癒されていくのと同時に、箱庭に現れてくる世界が変わっていく、その精神の癒しの過程は、感動的である。