作曲をしている人間がオーケストレーションの技術を(特に独学で)学ぼうとして、最初にぶつかる壁の一つは、管弦楽法を体系的に解説した参考書が非常に少ないことではないかと思う。その中で、このピストンの著作は昔から手に入りやすく、価格も手ごろで、おそらく日本では最も広く読まれている管弦楽法の本ではないだろうか。
内容的には可もなく不可もなしといったところだろう。楽器の性質、音色の特徴、音域、記譜法など基本的な情報がコンパクトにまとめられており、通読すればオーケストラのあらましが理解できる。ただ、特に管楽器で、各楽器の様々なバリエーションについての記述に紙数を費やしすぎ、楽器全体としてどのように使われているかの記述が短くなってしまっている部分がある。掲載されている譜例も、あまりにも簡略化され過ぎていて、いったい曲のどの部分なのか判断に苦しむものが多い。出版元と頁番号だけでなく、スコアを持っていない読者のことも考えて、せめて第何楽章かくらい書いて欲しかった。あと、原書の出版が1955年ということで、今となってはかなり古くなってしまった内容も目立つ。日本語訳の初版も1967年と古いためか、文章が堅くて少々読みにくい。
管弦楽法の基礎を知りたい入門者には取りあえずお奨めできるが、より高度な内容や最新の情報を求めている上級者には、少し物足りないかも知れない。