評者はこの版元に多少の義理があるので、もちろん買って読む。しかし、「社史」を非売品ではなく定価をつけて手前で売るのは、いくらなんでも厚かましい、と思うのは私だけであろうか。和田芳恵のほうは、すでに歴史的テクストとなって久しいから良しとしよう。ところが本書は、現役の社長がまえがきを、専務があとがきを書いているばかりか、文中にも社員・元社員の発言が多数収録されるという純然たる身内ものなのである。形式的な著者、永江が気の毒に思えるほど影が薄く、筆致も冴えない。
版元や編集者に自らを語るべき何があろう。あるとすれば、その出版物が読者に囁くかもしれないかそけき声のみであり、それ以外にはない。自分から声を張り上げてどうするのだ。かくもナイーヴな夜郎自大や、謙虚と見えて実は過大な自己評価が、いまや数少ないまともな版元ですら疑われないのなら、もはや出版は終わっていると観念するしかない。