著者は、環境先進国であるデンマークで生まれ育ったことからか、
環境保護・持続可能性追求については身体中にしみこんでいるようです。本書全体からそれらが伺えます。
本書は、P.F.ドラッカー『既に起こった未来』から発想を得て、
現在既に起こりつつある状況を踏まえた上で新たな競争軸の必然性を提起しています。
既に起こった未来として、
地球人口の増加×豊かな暮らしへの欲求=史上最大級の消費拡大が、今世紀半ばまでは続くとしています。
一方でこれらのことが起きれば当然地球環境に甚大な影響を及ぼすことになりますので、
CSR(企業の社会的責任)やサステナビリティがより一層企業に求められてくるとしています。
また、1987年に『持続可能な発展』という概念が確立されたことから、
この年を境に、文明的な転換が加速しているとしています。
これらのことから、
社会制約(温室効果ガス排出削減の圧力、各種法律・規制の制定、市民による抗議活動・ボイコットなど)や、
環境制約(廃棄物の影響、生態系の変化、資源制約の強化、化学物質リスクなど)が、
より企業経営に突き付けられることから、これらをクリアしないと『創業許可』が得られないということです。
そして、これらの制約を逆手に取って、戦略に位置づけることで『成長許可』が得られるということです。
制約を逆手に取って『成長許可』を得るためには、
これまでの競争軸である、自己変革力・マーケットシェア・価格・品質に加えて、
第5の競争軸として『環境革新』+『持続可能性追求』を獲得すべきであるとしています。
これは、自社の持続的発展と、社会・自然の持続可能な発展とを同軸でとらえる経営をすることです。
そして、産業界を代表するような巨大多国籍企業の先進的な取り組みを紹介しています。
(ウォルマートやGE(米)、トヨタやホンダ(日)など)
これらを推進するためには、
これまではトレード・オフとして考えられてきた企業経営(利潤追求)と社会・自然の持続可能性を、
これからはトレード・オンとして考えていくようにマインドチェンジすることが重要であるとしています。
また、このような取り組みを『持続的価値経営』とネーミングし、
7つの原則と3つのステージを活用するように促しています。
更に、参考情報として『持続的価値経営』に挑戦している企業100社を以下の分類で紹介しています。
・天性・革命型(第一世代):環境革新や持続可能性追求が企業設立の趣旨そのものになっている企業
・改心・プッシュ型(第二世代):市場からの圧力がない時代から、方針・戦略を大転換した企業
・改心・プル型(第三世代):市場からの強い圧力に対応することで『成長許可』を得ようとする企業
ちなみに、日本企業は、第一世代で6社、第二・三世代で各々9社が紹介されています。
また、このような動きから、新しい競争原理の前提条件が台頭してきていると指摘しています。
それは、環境成長経済、生命を育む資本主義、ホモ・ソシエンス(共鳴・協働・共創できるヒト)とのことです。
既に起こった未来という事実を冷静に見極め、企業の未来の姿を論理的に構成していますので、
非常に読みやすく、理解しやすい本に仕上がっています。
企業に携わるすべての方々の必読書といえるのではないかと思います。
またNGO・NPOで活動されておられる方々にとっても、企業と接点を持つ場合には有益な本だといえます。