「フーテンの寅」は山田洋次が監督をしていない数少ない作品で、それ故、他とは異なるテイストがあります。
山田寅さんは、ひどい目にあってもどこかほのぼの、どこかに救いがある雰囲気で終わらせますが、森崎映画は寅さんだけでなく、叩きのめされてもそれでも逞しくいきていくバイタリティみたいなものを感じる。これは監督の個性なので、どちらが優れているとはいえず、それぞれの個性を理解したうえで見るべきかと思います。
ただし、森崎監督は初期の山田作品で脚本などで深くかかわっていたこと、また
テレビ版の寅さんの脚本にもかかわっていたことで、「寅さん」が誕生した当時のイメージには森崎味もかなり含まれていたのではないかと面ます。その意味では映画で森崎寅さんが見られるのは貴重。
寅さんが染奴の父親(花沢徳衛)との間で交わす、渡世人同士の独特の感覚等は、”健全な山田寅さん”とはまた別にイメージが内包されていると思います。
俳優陣では悠木千帆(樹木希林)、左ト全、野村昭子等の芸達者がそろっていて見所があります。ある意味、このメンバーも後の寅さんではあまり見られず、他のシリーズ作品とは違う雰囲気を出す要素の一つなのかも知れません。