寅さんシリーズの中では、悲しい結末を迎えるマドンナが登場する。観た直後はその悲しさの印象が強いが、時間が経つとむしろ登場人物の温かい気持ちが思い出される佳作だと思う。
マドンナ役の京マチ子、黒澤監督の「羅生門」や衣笠貞之助監督の「地獄門」に出演した名女優。日本初の国際的女優と言ってもいいと思う。その京さんが、没落したとはいえ、名門出身のたおやかで上品なマドンナ(綾)を演じる。このマドンナと寅さんとの掛け合いがとても楽しく、微笑ましい。
特に長く病気療養をしていた綾さんが店を出すとしたら何屋が良いか…寅屋一同と談笑するシーンは温かさに満ちている。
そして、マドンナの娘を演じた檀ふみ。マドンナではないが、シリーズ中の他の普通のマドンナよりもよほど存在感があって、寅さんとマッチしている。檀さんは後年42作目で重要な役を演じている。これもマドンナではないが、私の中では岡本茉莉さん(大空小百合)に次いで、「マドンナと同格以上」の女優になっている。
作品中、印象に残るのは、綾さんの病状が悪いのを知って、寅さんにせかされてさくらが芋の煮っ転がしを作りかかるシーン。倍賞さんの演技が素晴らしかった。
寅さんが雅子先生を訪るラストシーン、とても良い締めくくりだったと思う。
尚、前半で阪東鶴八郎一座(大空小百合の劇団)が登場し、寅さんと旧交を温めるのも嬉しいシーン。一座はこの後第24作で再登場するが、寅さんとの絡みはなく、寅さんと一座の交流はこの回が最後になる。