「男はつらいよ」シリーズで最高の観客動員数を記録したのがこの「私の寅さん」(241万9000人)。もちろん、吉永小百合や浅丘ルリ子のリリーが登場し、シリーズが活気づいていたこともあるのだろうが、一つのピークを記録した作品だと思う。
この作品で特筆すべきは岸恵子のマドンナ・りつ子。さばさばして気が強く、寅さんに食ってかかったり…ある面ではリリーやぼたんに近い気質だが、彼女は画家。インテリで知的なのだ。
「寅次郎夕焼け小焼け」の宇野重吉(池ノ内静観)、「あじさいの花」の片岡仁左衛門(加納作次郎)などでもわかるように、「寅さんとインテリ」の相性は良い。りつ子さんはマドンナだから少し意味合いは違うが、マドンナとインテリの二つの面を兼ね備えた人物なのかも知れない。女性として、インテリ独自の立場から寅さんの良さを理解している。このあたりがこの映画の魅力になっている。
恋愛にはならなかったが、「マドンナとの友情」という点では本作が最高かも知れない。
「寅さんは私のパトロンね」…このセリフがりつ子さんの寅さんへの理解の深さを物語っている。
それ故にラストの「別れの曲」は切ない。かなわぬ恋だが、りつ子さんが寅さんに感謝の気持ちと友情を持ち、寅さんの気持ちがわかっているだけに切ない。
シリーズ中、寅さんの失恋シーンでも最も切ないかも知れない。
やはり「りつ子」さんの魅力は、岸恵子ならではのものかも知れない。知的でべたつかないイメージ。そして画家と一人の女性としての間での苦悩。は彼女ならではの存在感だったと思う。