超越知性体バルディオクの手先の具象に対し主導権を握るチャンスを得たテラナーが仕掛ける大胆な謀略とその後《ソル》が迎える絶体絶命のピンチを描く大長編SFスペース・オペラ宇宙英雄ローダン・シリーズ第415巻。本巻はシリーズをリードし中心で支える最多執筆者フォルツの独壇場です。本書は実に久々に真実の意味でのペリー・ローダン復活を実感させる作品になりました。アフィリー・サイクルで大執政官から耳慣れないエグゼク1の称号へと変わって以後どうも不調気味で、最近ではテルムの女帝に贈られた胸のクリスタルで操られているのでは?という疑惑で仲間達が不信感を抱く等々、全巻読破の熱狂的ファンとしても大丈夫なのかと本気で心配していましたが、ようやく本書で報われた気持ちになり長い間のモヤモヤが全て吹っ飛んで「やっぱり信じていて良かった!」と心から安堵しました。
『テラナーの謀略』ウィリアム・フォルツ著:ヴァルベの巣星系では重力定数の変動のカタストロフィによって大混乱が生じヴァルベ人のみならず重力魔術師(三人の具象)も苦しんでいた。ローダンの決断により三人のソラナーの捕虜救出に向かったテラ陣営に思わぬ好機が訪れるのだった。本編では老朽化したロボットのケイシーを異色の語り手に選び、ラストでヴァルベ人を手助けし救う無私無欲な英雄として役目を果たし読者の心に爽やかな風を感じさせてくれます。『第四具象誕生』ウィリアム・フォルツ著:《ソル》のSZ=1に捕えられた具象の球体内部で第四具象ブルロクが誕生し元からの三具象と対立していた。一方、ローダンの胸のクリスタルのシグナルを探知したチョールク艦隊が具象を殲滅すべく《ソル》に接近し、テラナーに最悪の危機が迫る。本編ではソラナー技師のガールマン(少女男?)のネズミ化騒動でブラック・ユーモアを描きながら、第四具象ブルロクに《ソル》が乗っ取られる完全な敗北に続いて、チョールク艦隊による具象もろともの《ソル》乗員皆殺しの危機とまさに最悪、これ以上はないと思える絶体絶命のピンチを演出します。この袋小路の状況にローダンが出した答は逆転勝利には程遠くとても無理だけれど利害抜きの人類への無償の愛が感じられ深く感動すると共に「昔のローダンが帰って来た!」と胸が熱くなりました。
本巻の翻訳者、渡辺広佐氏のあとがきは昨年の八月に数十年振りに旅をされたイタリアのポルツァーノを紹介し博識をまじえたミニ紀行文を披露されています。バルディオク・サイクルもいよいよ大詰めかと予想させる流れになって来ましたが、まだ別局面の物語の殆ど全部が解決途上にありますし、ローダンの愛読者らしく焦らず気を長く持って横道も楽しみながらシリーズをずっと見守って行こうと思います。