1989年に筑摩書房から出た単行本の文庫化。
秋田・比立内でマタギの統領として生きてきた松橋時幸に取材を繰り返し、その半生をまとめた書物。熊狩りの本というよりは、マタギの家系に生まれた男の感じたこと、考えたこと、体験したことをまとめた本という印象。
狩りに出る前の幼少時から初めての狩り、猟銃を使う練習、初めて熊を仕留めた話、戦後の変化などがエピソードごとに語られている。釣り、ムササビ猟、ウサギ狩りなどにも触れられており、マタギの日々の生活がリアリティをもって感じられる一冊だった。
しかし、マタギというのは斜陽の世界である。マタギの人数も減っているし、熊も減っている。また、血なまぐさく、命の危険もある世界だ。そのなかでマタギとして生きてきた松橋の、悲哀が漂っている。