ここ10年くらいで急速にアイテムが充実した旧日本軍AFV関係の模型ですが、本書は雑誌掲載の作例記事を再編集し一冊に集めたものです。掲載記事のリストは書籍データを参照してもらえばよいと思いますが、八九式中戦車から五式中戦車までを一通り網羅しており、日本陸軍中戦車のモデリングガイドとして、また模型を作らない人にも簡易なビジュアル図鑑としても悪くない内容でしょう。
一方で、もとになった雑誌記事の関係からか、八九式中戦車は入手の難しいグムカ製ガレージキットの作例が掲載される一方で、アーマーモデリング誌とタイアップで販売されたプラモデルの記事がないなどの疑問があり、また一部の作例の考証(例えば新砲塔+初期車体の九七式中戦車は、作例の車体は実車写真から溶接砲塔であることが確認できるし、一式中戦車の砲架はFM社のキット形状が正しく、九七式新砲塔風に改修した作例は誤りです)に疑問がある点は減点の要素と見ることもできるでしょう。
幸い本書巻末にはかなり充実した現存車両各車の細部写真が掲載されており、イラスト解説による細部のバリエーションなども紹介されているので、実際に模型制作の参考とされる場合は、制作記事と同時にこうした記事にも目をとおし自分なりの考証を心がければ、より正確な模型を手にすることも出来るでしょう。
やや厳しめのコメントをつけましたが、日本軍中戦車、特に九七式中戦車、三式中戦車のバリーエーションをよく網羅しており、また資料価値のある実車写真、細部考証イラストを要領よく一冊に編集したという意味では、手軽で使いやすい一冊であり本レビューでは☆四つとしています。
旧日本陸軍戦車に対する厳密な考証を求める人にとっては既知の情報が多く、☆の数が減ることもあるかもしれません。購入を検討する場合は、自身の知識量なども考慮して費用対効果を判断して下さい。