フランスの飛行機を研究する人間、などという殊勝な人種はそう多くはないと思うけれども、模型愛好者などにはフランス機を熱烈に愛する人が結構多い。かくいう私も模型は作らないが第1次大戦と第2次大戦の間から第2次大戦の終わりまでのフランスの航空史と航空機を非常に愛している者の一人である。日本語の資料としては、「第二次大戦 イタリア・フランス・ソ連軍用機」(航空ファンイラストレイテッド No.112, 2000)と、古いながらもすさまじい情報の集積である「仏伊ソ軍用機の全貌」(酣燈社,1965)くらいしかいいものがなかった。が、これは飛行機の解説書であり、歴史に関していえば、仏文で読むしかない。さらに、飛行機の解説でも、固有名詞の発音や表記などは間違っているものが多い。それは主として、仏語の資料を仏語で読むのではなく、英語経由でフランスのことを語るということによるものであったろうが、この柄澤氏の訳書は、固有名詞の発音に関して万全を期している。フランス人で、航空史の専門家に発音してもらっているのである。このような良心的な作業の結果できあがったものは素晴らしい本にならないはずはない。しかし、最初に語っておくべきであったが、この本は原書は英文であり、さらにいえば、原書は固有名詞の表記間違いなどいささかずさんな本なのである。柄澤氏はそうした部分も補って、日本語で読める航空史の名著を作り上げてくださったわけで、私はその点大変感謝している。氏の他の訳業(イタリア軍戦闘機エースなど)も同様の良心につらぬかれていて気持ちがいいものである。ぜひご一読を!