本巻で最も印象的なのが、戦争中から既にチャーチルがソ連の膨張主義を感じ取り、これに警句を発していたことである。チャーチルとスターリンのやり取りが本巻には収められており、これは超一級の資料であろう。チャーチルはスターリンとの交渉を通じて、ソ連には東欧を支配下に置く野心があることを察知し、アメリカに対しても注意を呼びかけた。しかし、戦争に勝つことしか頭に無いナイーブなアメリカは聞く耳をもたず、チャーチルはアメリカに対してフラストレーションを抱く。本書を読むと分かるが、チャーチルの「鉄のカーテン」は何も戦後に初めて言われたものではなく、戦時中から既にアメリカに対して警告を発するために使われていたことが分かる。第二次世界大戦から冷戦までの流れを知るのに、本書ほど優れた書物はない。