終戦直後、焼け跡の浅草が舞台の長篇小説。売れない芸人(善三)と戦災孤児(武雄)、復員兵(光秀)と踊り子(ふーこ)が一つ屋根の下で暮らすうちに、奇妙な友情が芽生え、それぞれが抱える深刻な事情が明らかになるというストーリーだ。しかし、食うものにも困り、明日への希望もない彼らの言葉に救われる気持ちがするのはなぜだろう。まるで映画「ニューシネマパラダイス」エンドロールのように読後に蘇ってくる言葉がある――。
「人間、笑いたいときに笑えて、泣きたいときに泣けたら、だぁれも映画や実演なんか観ようとは思わないのよ」(保)「たった七人の職場じゃないの。私たち、戦争を生き抜いたのよ。楽しくやらなきゃ、損よ」(ふーこ)「ほんとに笑いというのは、不思議なものよ。簡単には正体掴ませてくれんのよ。でもね、坊ちゃん。どうぞ笑って生きてください。これからいろんなことがあるやろうけど、どうか、笑って生きてください。それがおじさんの、たったひとつの望みよ」(善三)