1977年公開。キネマ旬報を始め、第一回の日本アカデミー賞などで、その年のベストを山田洋次監督の『幸福の黄色いハンカチ』と争ったものの、2位に惜敗した名作(ちなみに外国映画のベスト1は『ロッキー』)。
今思い返すと、なるほど、この映画こそは同年を代表する日本の『ロッキー』だと思う。
同年のモスクワ映画祭では監督・脚本の新藤兼人が監督賞を受賞(といっても同氏は同映画祭ではすでにこれ以前にグランプリを2度も取っている受賞の常連なので、あまり驚きはなかったが)。
個人的には70年代の日本映画のベスト1に今でも挙げる作品だ(ちなみに同年のキネ旬・ベスト10は以下3位が『はなれ瞽女おりん』4位『八甲田山』5位『青春の門・自立篇』(浦山桐郎監督)という順。素晴らしい作品が多かった時代だ)。
まずはこれだけの低予算クルーで、北海道から東北にかけて惜しみないロケーションを慣行し、今では失われてしまった日本の農村の原風景をキャメラにしっかりと収めた功績を称えなくてはいけない。そして監督は広島出身ながら、これまでにも北部農村の貧しさに拘る映画作りを行ってきた(『裸の十九才』『わが道』等)が、本作はその作業の集大成的な作品である。
北部農村の貧しさというのは今の人には理解しづらいかも知れないが、この映画が作られた頃まではまだ「出稼ぎ」という言葉が死語にはなっていなかったから、今から思えば昔日の感がある。この映画が素晴らしいのは、そうした貧しさだけをとらえているのではなく、その中のユーモアと生きることの力強さを余すことなく画面からほとばしらせているからだ。
それは高橋竹山(津軽三味線の名手)というとてつもなくユニークなキャラクターに依るところが大きいのだが、だから全編を通して見ると、力強さと前向きになれるエネルギーを受けることができる作品になっている。正に日本の『ロッキー』たるゆえんだ。