千年の時を超えて読み継がれている『竹取物語』。前半に、立原位貫(たちはら いぬき)の色刷りの版画を置き、本書の後半、江國香織(えくに かおり)の現代語訳の文章を配した一冊。縦 176mm×横 187mmの、やや横長の本です。
まず、馥郁としてしっとりとした気品を湛えた十二枚の版画、平安時代の雅(みやび)な香りが立ち上ってくる版画の雰囲気、そのたたずまいが素敵だったなあ。
暗く大きな山の中に、ぽっと薄明かりが灯るような冒頭、別世界からの客人・飛来の一枚。
風に雨、黒雲に雷、逆巻く波の凄まじい音が、絵の中から聞こえてくるような一枚。
秋草がさわさわと揺れる中、満月にやや欠けた月を眺めるかぐや姫と、彼女の艶やかな衣装が美しい一枚。
皓皓と目も眩むばかりの満月に向かい、昇天するかぐや姫の後ろ姿を描いた一枚。
対角線上に配された三日月と壺の間、富士の稜線がまるでピラミッドのそれを彷彿させて味わい深い一枚。
雰囲気のある版画の一枚、一枚に魅せられました。
江國香織の文章は、静かな落ち着きを感じさせる端正なもの。日本最古のファンタジーに寄り添い、あたたかな血を通わせ、息づかせた文章であるなあと。台詞のある会話の文章が殊に上出来で、『竹取物語』の登場人物たちが現代に蘇り、ふと気がつけばそこにいてしゃべっている、そんな印象を持ちました。