‘今週はやられたあ〜’とか‘来年は絶対に収支プラスが目標だあ〜’など、大方の競馬ファンはいわゆる馬券中心主義に走ってしまい、競馬本来の魅力を見逃しているのが現状であろう。中には、贔屓の馬の出自から丹念に調べ上げ、自称競馬評論家を吹聴する奇特な御仁も居られるかもしれないが。いずれにしても、本書は長い時間を要して築き上げてきた近代日本競馬を、騎手、調教師、馬主、生産者等々を中心に、競馬サークル内に隠れた様々なエピソードを興味深く紹介するものである。一頭の競走馬にまつわる話が、かくもドラマチックに展開されるのを目の当たりにすれば、競馬に1歩踏み込めないで躊躇されている方々も、競馬というスポーツが単なる‘ギャンブル’を超越した興行であることを再認識するであろう。