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116 人中、99人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
フィンランド教育の紹介は貴重だが、余りにもイデオロギーの偏向があるのが欠点。,
By 少子化問題に直面しようとしない日本 (さすらいの旅人) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 競争やめたら学力世界一―フィンランド教育の成功 (朝日選書) (単行本)
そもそも執筆者がフィンランドの教育を客観視せず、自らの価値観に合致する側面だけ取り上げているのが最大の欠点である。フィンランド教育を研究し日本に紹介した功績が大きいだけに実に残念である。フィンランド教育を客観的に研究していれば、出てくる結論は明瞭で「税率を上げ、教育予算を増やし、教員を増やし、現在の公立学校教員の給与優遇を廃止して少人数学級を実現すること」であるはずだ。それなのに何故、筆者は「数値目標に反対」(フィンランドは予算と人員に物凄く拘っているのに!)や「教師が手づくりのテストを作成」や「学級づくりという伝統的な協同の知」のような皮相的な処方箋を出してくるのか。フィンランドと日本の教育の本質を知らないと言わざるを得ない。「上の教育哲学が貧困」とするのは正しいが、研究者の教育哲学、社会構築能力こそ貧困なのではないのか(日本の大学の教授会や人事慣行の実態を考えると結論は明白)。日本国民を広く説得できる論拠と現実的な提言こそが不足している。 そもそもフィンランドの教育の最大の特徴は、予算と人的資源を公教育に集中投資していることであって、「競争しないこと」では全くない。アメリカと並び先進国中で最も教育費が高く、人員に予算をかけない我らが日本とは全く対極にある国である。(ついでに言えば、教員の給与に関しては、年功序列を堅持する日本の方が高くなっている!) 個人的には、日本では人口密度が高くてあらゆる側面で競争的になりがちであること、合理性よりも感情的な判断に左右され、冷静な議論を行う習慣に欠けていること、先を見据えた戦略的思考が弱く、失敗や欠点ばかり追及する後ろ向き発想をしがちであること、無意識に価値観の等質性を他人に要求して価値の多元性への拒否反応が強いこと、以上の四点から、フィンランドの教育をそのまま日本に取り入れるのは困難と考える。 また、EUの戦略、或いはフィンランドの国家戦略は根本的に小国が国際競争に勝ち抜くためのものである(※)。著者はなぜ露骨にその事実を無視するのだろうか。例えばフィンランド政府が自国を代表するグローバル企業のノキアをなぜあれほど優遇するのか、少しは考えるべきではないか。 ※ この側面に関しては、『受けてみたフィンランドの教育』の方が遥かに参考になる。 受けてみたフィンランドの教育 ただでさえ教育学はファンタジーまがいの言説を過剰生産しがちな分野である。教育史や教育社会学のように客観視を重んじた研究を望みたい。
103 人中、88人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
社会に出て必要な力を,
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レビュー対象商品: 競争やめたら学力世界一―フィンランド教育の成功 (朝日選書) (単行本)
本書を読んで、フィンランドの教育がいかに成熟したものであり、社会との深いパイプを持っているかと気付かされ、 教育が社会を写す鏡であるとするならば、その社会全体の成熟度にも感心させられた。 そして読み進めるほどに、日本の教育について案ぜざるを得ない気持ちになった。 教育とは社会と密接に関係しているべきものであり、社会に出て本当に必要な 力をつけるための場所が学校であるはずだ。 しかし、日本の教育は社会と切り離されていて、それまでは数字での判断が主だったのに、 それでいて社会に出る際には、「個性」を要求されると言う、とてもチグハグな状況である。 本書を読んでとても印象深かったのは、フィンランドの教育が自由であり、 教師による強制なしに一人一人のやる気を引き出すというやり方の背景として、 「自分が社会に受け止めてもらえるという安心感」があるということである。 日本に置き換えて考えてみると、自分の存在を認めてもらうための努力の一つとして、 いかに数字をあげるかということに力を注ぐのではないか。 そして、そこにうまく乗れなかった子どもたちが出てくるのも仕方ない。 しかしフィンランドの教育方針は、 「教育と言う船に乗った子どもは、一人たりとも落とさせない」 というものであり、根本的な考えの違いに気付かされ、感心させられる。 フィンランドの教育から我々が学び、考えるべきことはとても多い。 教育に関わる方、またそうでない方にも一読をお勧めします。
12 人中、11人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
日本の教育改革へのヒント集,
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レビュー対象商品: 競争やめたら学力世界一―フィンランド教育の成功 (朝日選書) (単行本)
学力世界一となって日本でも高い関心を集めるようになったフィンランドの教育事情を、教育における比較文化を専門とする研究者が取材・考察した書である。著者はフィンランド教育のすばらしさを手放しで評価する。本書を読むと、フィンランド教育がなぜ成功したかわかる。1つには教育の自由化、もう1つは教育費の充実がある。教育の自由化は、とくに地方公共団体が学校とともに教科書採択や教師採用にコミットしている点がある。この点、すべてを文科省がコントロールする日本と対照的だ。フィンランドは日本ほど中央集権が進んでおらず、地方が地方を活性化する人材づくりに成功している。 また、少人数制を実現し、授業の組み立てがすべて教師にゆだねられている。教職は最難関の職業の1つで、優秀な人材が集まっているうえに、授業以外の拘束が少なく、きちんと準備をして授業にのぞめる。また、フィンランド人の価値観は日本ほど学歴主義に傾いておらず、得意な分野を伸ばすことにこそ、教育の本質を見ている。生徒は答え合わせをするのではなく、本で調べるのである。図書館利用率世界一の面目躍如だ(もちろん、これは冬の長いフィンランドの気候も大きいが)。これなら、教育がうまくいくのも当たり前だと感じた。 ひるがえって、私たちの日本。人口の高齢化で財政は高年齢層にますますシフトし、少子化の進む教育費はどんどん削られている。また、大卒の興味は金融や株式へと向かい、教育に行く人材の質は低下している。 これは、数少ない勤労における男女平等を実現していた教職が、今や珍しい存在でなくなり、優秀な女性が教職に行かなくなったことが大きい(詳しくは『こんなに使える経済学』(ちくま新書)をご参照ください)。 フィンランドの教育制度は確かにすばらしいが、それをそのまま実現することは不可能である。得意なことを伸ばすことを目指すフィンランド教育と苦手をなくすことを目指す日本教育。どちらが優れているとは言えない。それは、エリート教育・職業教育を分けるか、教育を平等なものと考えるかの違いでもあるからだ。ただ、やはり、時代はフィンランド教育のほうへ動いているように感じる。長期的には、フィンランドのように増税をし、教育や福祉に財政に割き、子を持つ多くの女性が(もちろん男性も)安心して働ける新たな市場を作ることが必要だろう。その中で、フィンランドのような教育を実現することは可能になっていくはずだ。 本書には日本の教育改善のためのヒントに溢れている。ただ、感情論ではなく、日本の財政にのっとり、かつ前向きな考え方が必要である。本書が描くのは、その具体策の手前の手前くらいである。ここから何を取り出すかは読者の知性に大きくゆだねられている。
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