現代文の教科書「山月記」で有名な中島敦の著作をひとまとめにした一冊。春秋戦国時代、前漢、唐の時代の中国や、アッシリアなどを題材にした作品は、一見堅苦しい内容に思えるが、読んでみると、滑らかに作品の世界に入ることができる。とりわけ、歴史に興味がある人ならば、いっそう味わい深いことだろう。
そして、文体が心地よい。不要な装飾のない流麗な文章は、読みやすく、それでいて骨があるように感じる。また、現代仮名遣いでないので、今では著作物で使われることの少ない漢字が多いものの、それもよい味わいである(それらを知らなくとも、「かな」をふってあるので、読む上では支障ない)。
私には、「文字禍」、「山月記」、「李陵」が印象深い作品であった。ともあれ、現代の、ひたすら量産される新書・文庫の類とは比べものにならない、味わい深い一冊である。この値段で読めるのはうれしい。