日常に潜む超常現象を描いたミステリー作品で日本SF大賞に選ばれました。
これは、日本のSF関係者の見識の高さを示した出来事と思っています。
文学賞と思われがちの賞ですが、そもそも日本のSFの出発点は手塚治虫氏でしょう。
小松左京、星新一、筒井康隆の御三家は、漫画との関わりが非常に深く、小松左京氏は手塚氏に憧れて、モリ・ミノルというペンネームで漫画家デビューも果たしています。
余談ですが、芥川賞、直木賞は、SF作家を選びませんでした。確か、筒井康隆氏が『大いなる助走』でそのことを描いています。
それを知れば、日本の文壇が落ちぶれて、SFが隆盛してくるのも当然と言えます。
『童夢』は、SFとしても優れていますが、漫画表現としても、それまでの流れを変えるようなインパクトをもっています。
漫画は小説に比べて、直接表現をしなければなりません。例えば、雲、と書いたら、読み手は自分で雲を頭に描きますが、漫画は、雲を描かなければなりません。
これが、漫画表現の壁です。
大友氏の『童夢』は、この壁を果敢に乗り越えようとしています。
それは映画的なイメージカットを大胆に取り入れ、映画のカメラをスパンさせてゆくようなコマ割を行っています。
後に大友氏は、映画監督に転進されますが、漫画で映画を撮ろうとしていたのではないかと推察します。
日本のマンガを大きく進歩させた一冊だと思います。