ガリオン達一行の旅路もいよいよ佳境を迎える本作では、金を巡る争いのために滅亡した亡霊が徘徊するマラゴーでの悲しみを抱えるマラの神との出会いと頭の中に響く「声」との対話、そしてアルダーの谷への旅路を通じてガリオンは自らの力と向き合い、それをコントロールする術を学んでいく。
とはいえ、そこはエディングスならではの展開で、”意思”と”言葉”で表現されるこの世界の魔術の訓練に、用いる言葉の品格を語るベルガラスなどには思わずニヤリとさせられてしまう。
そして、成長するのはガリオンだけではない。恐怖を覚えた堅物の騎士マンドラレンは木訥な鍛冶屋のダーニクとのやりとりで恐怖を克服する術を学び、排他的な選民思想の持ち主レルグは自らの小ささに気づいてシルクをその能力を用いて救出し、意地っ張りなセ・ネドラは思いがけない事態に飾らない自らの気持ちをさらけ出す。
まさにそれぞれの個性が織りなす絶妙のハーモニーは、本書の後半で一行を恐るべきトラクの弟子、クトゥーチクの住処であるおぞましきラク・クトルへの旅路とクトゥーチクとの対決でクライマックスを迎える。
前半の様々な景色が織りなす旅路と後半のラク・クトルでの対決という物語の盛り上がりに引き込まれて分厚い本書を一気に読み通してしまった。
ユーモアとシリアス、キャラクターの造形と景色の描写、緩急を付けた物語の展開など、やはりベルガリアード物語は私にとって最高のファンタジー小説の一つである。